業界ニュース

紙・板紙4月需給/メーカー輸出が20ヵ月ぶりでプラスに
 日本製紙連合会の集計による4月の紙・板紙需給は、生産が前年同月比+2.8%の223.4万t、国内出荷が同▲3.5%の211.3万t、メーカー輸出が+0.2%の5.8万t(速報値)。生産はプラスだったものの、国内出荷は前月の増加から再び減少に転じ、うち紙は▲4.1%で2ヵ月ぶり、板紙は▲2.7%で3ヵ月ぶりのマイナス。主要品種では新聞用紙を除き減少している。
 紙・板紙のメーカー輸出は量的には引き続き低調だが、前年が震災によって大幅減だった影響から2010年8月以来20ヵ月ぶりのプラスとなっている。紙・板紙の在庫は前月比+6.3万tの206.9万tと、前月の減少から増加した。うち紙は+4.3万tの145.3万t、板紙は+2.0万tの61.6万tで、前者は2ヵ月ぶり、後者は3ヵ月ぶりの増加である。以下、主要品種の動向を眺めてみる。
 〔新聞用紙〕
 国内出荷は前年同月比+3.4%の26.2万t。広告出稿の増加などもあり3ヵ月連続のプラス。
 〔印刷・情報用紙〕
 国内出荷は前年同月比▲5.4%の65.1万t。輸入の大幅な増加などが影響し、前月の増加から再び減少に転じた。他方、輸出は+3.3%の4.0万tと量的には低調も、震災影響で大幅に落ち込んだ前年との対比では増加し、主力の塗工紙を中心に10年9月以来のプラスを記録している。
 〔包装用紙〕
 国内出荷は前年同月比▲11.2%の6.4万tで、7ヵ月連続のマイナス。主要品種の中で落ち幅は最大となった。
 〔板 紙〕
 段ボール原紙の国内出荷は前年同月比▲2.2%の74.2万t。一部需要家による前倒し需要の反動などから3ヵ月ぶりのマイナスとなった。白板紙の国内出荷は同▲4.6%の12.3万t。前月の微増から再び減少に転じている。

(Future 2012年6月4日号)

厚労省/食品容器への再生紙使用がガイドラインを告示
 食品紙製容器への再生紙使用に関して、厚生労働省はかねて安全性確保の観点から、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会でガイドラインを検討してきたが、去る3月2日開催の審議で了承されたことから4月26日に内閣府の食品安全委員会に諮問し調整後、翌27日付で同省食品安全部長名により、以下の内容が正式に各都道府県知事に対して示された。
 「紙・板紙中の水分または油分が著しく増加する用途(ティーバッグ、コーヒーフィルター、油こし等)や電子レンジ・オーブンなどの加熱を伴う用途(高温に加熱して喫食する調理済み食品の容器、ケーキの焼き型など)に使用する紙製器具または容器包装には、再生紙の使用は避けること」
 厚労省では今後、この内容を規格基準として告示370号に入れ込む形で対応するとしている。そして、その際には1年程度の周知期間を置くとともに、Q&Aで各種問い合わせにも対応することになっている。そこで日本製紙連合会としては、化学物質対策小委員会で告示内容を精査のうえ、疑問点については内部で検討し提出することを決めている。

(Future 2012年6月4日号)

全国中芯原紙工業組合/新理事長に松浦真左基氏
 全国中芯原紙工業組合は5月15日、水谷誠理事長(エコペーパーJP代取社長、日本紙パルプ商事執行役員)の社内人事に伴う退任により、新理事長に大豊製紙代取社長の松浦真左基(まつうら・まさき)氏を選出した。

(Future 2012年6月4日号)

板紙代理店会/新会長に野口憲三氏
 日本板紙代理店会連合会、東京板紙代理店会は5月23日開催の定時総会でそれぞれ役員改選を行い、いずれも新会長に日本紙パルプ商事の野口憲三社長を選任した)。
 新会長として挨拶に立った野口氏は、日本の紙パルプ業界について「電子社会の到来や人口の減少などから全体としては需要が減少し、また輸入紙の増加もあって今後も厳しい状況が続く」と予想。しかし板紙については「輸入紙の流入は限定的であり、現在も比較的堅調な動きを示している。また包装材には必要不可欠な商品なので、景気回復や復興需要による物流の増加に伴い、今後も需要の伸びる余地は十分に残されている」との認識を示したうえで、会員各社に対し次のように呼びかけた。
 「会員各位にあっては原紙販売での無益な数量・価格競争を避け、ユーザーと共同で付加価値の高い商品を開発・販売するなど、他社とは異なる商品のラインアップを心がけ、利益確保を最優先課題として取り組んでいただきたい。また業務の合理化、適正な人員配置、ユーザーとの共同取組みによる配送の効率化など、すでに実行済みかもしれないが一層推進し、経営基盤の強化を図ってほしい。
 さらに環境商品の取扱いや地域社会における環境活動の実施などは、紙の販売面においても必ずプラスに働くと信じている。今後とも関係官庁や関連団体との連携を密にしながら、代理店会の活動を積極的に進めていく所存であり、会員各位の理解と協力、支援をお願い申し上げる」

(Future 2012年6月11日号)

王子製紙グループ/持株会社制移行で大規模な組織再編
 王子製紙はかねて、今年10月1日を期して持株会社制に移行すると発表していたが、このほどそのスキームが明らかになった。持株会社としての王子ホールディングス鰍フ下に、各分野ごとの事業会社がぶら下がるという形だが、幾つか新機軸もある。
 まず持株会社制移行の背景にあるのは、国内外で際立った対照を見せる事業環境。すなわち国内需要が成熟化し減少する一方、国内市場とアジア市場が一体化の方向へ急速に進みつつあり、国際市場における競争力および収益力強化が急務となっている。このような経営環境のもとで、王子グループはコストダウンによる国際競争力強化、素材・加工一体型ビジネスの確立、研究開発型ビジネスの形成による成長、資源・環境ビジネスの推進、海外ビジネスの拡大、商事機能強化――を基本戦略とする事業構造転換に取り組んできた。
 そして今後、より強力に事業構造転換の諸施策を推し進め持続的成長を図るうえでは、グループ経営効率の最大化、各事業群の経営責任の明確化と意思決定の迅速化が必要不可欠であり、そのためには持株会社制へ移行が最適と判断するに至ったもの。
 具体的には移行に当たって、各事業部門(白板紙・包装用紙、新聞用紙、洋紙、イメージングメディア、パルプ・資源環境ビジネス・原燃料資材調達)および間接部門の一部を会社分割により、それぞれ100%子会社に承継させ、従来の王子製紙は持株会社の王子ホールディングス(HD)として引き続き上場を維持する。
 これにより王子HDは総務・安全・環境・コンプライアンスなどのほか、グループ全体に係わる経営戦略、研究開発成果や知的財産のグループ活用推進、新事業・新製品の創出、事業間シナジーの促進などに専念し、グループの企業価値増大に努めていく。
 以下、王子HDの傘下に入る事業と子会社群を紹介する。
 <生活産業資材カンパニー>(連結子会社48社)
 王子マテリア梶i王子板紙から商号変更);白板紙・包装用紙事業およびパルプ製造・販売事業および関連事業。
 渇、子パッケージイノベーションセンター(新設);上記カンパニーおよび関係会社の委託を受けて行う経営企画、商品企画、デザイン業務の提供。
 王子パックスパートナーズ梶G包装、紙器・段ボール加工に係わる関係会社の事業活動管理。傘下に王子コンテナー(王子チヨダコンテナーから商号変更)などが入る。
 <印刷情報メディアカンパニー>(連結子会社10社)
 王子製紙梶G新聞用紙、洋紙およびパルプの製造・販売に係わる事業および関連事業。
 <機能材カンパニー>(連結子会社15社)
 王子イメージングメディア梶i新設);イメージングメディア事業および関連事業
 王子エフテックス梶i王子特殊紙から商号変更);紙類、パルプ類および合成樹脂加工品などの製造・加工ならびに売買
 渇、子機能材事業促進センター(新設);機能材カンパニーの企画・技術に係わる間接サポート業務。
 <資源環境ビジネスカンパニー>(連結子会社8社)
 王子グリーンリソース梶i新設);資源環境ビジネス・原燃料調達に係わる事業、パルプの仕入・販売に係わる事業および関連事業
 <コーポレートマネージメントグループ/独立事業会社群>(連結子会社49社)
 王子マネジメントオフィス梶i新設);人事、経理、財務、企画、紙製品輸出入の間接サポート業務、グループ経営支援に係わる事業
 <シェアードサービス会社群>(連結子会社4社)

(Future 2012年5月21日号)

日本製紙グループ/持株会社制を大幅に見直し日本製紙に事業を統合
 東日本大震災による主力工場の被災から1年余を経て、日本製紙グループが新たな事業再編に乗り出す。まず、洋紙事業を主力とする日本製紙が今年10月に板紙事業主体の日本大昭和板紙を合併し、紙加工事業の日本紙パック、機能性材料製販の日本製紙ケミカルも併せて吸収することで、総合紙パルプ企業として名実ともに一体の体制を築く。さらに来年4月には、この日本製紙と日本製紙グループ本社が合併、前者が存続会社になるというスキームである(図)。
 つまり来年4月に発足する新生・日本製紙は、総合紙パルプ関連事業の展開とグループ事業の統括機能という二つの役割を併せ持つ形になる。ただし、製紙事業の中でもやや特殊な位置を占める日本製紙パピリアと日本製紙クレシアは、日本製紙の子会社となり、本体には吸収しない。
 今年10月の日本製紙による日本大昭和板紙、日本紙パック、日本製紙ケミカルの吸収合併については、すでに各社の取締役会で承認されているが、来年4月に予定している日本製紙と日本製紙グループ本社の合併は来る6月28日開催の定時株主総会で承認決議を得る。
 これに伴い、日本製紙グループ本社は2013年3月27日に上場廃止(最終売買は前日の26日)となるが、存続会社である日本製紙はテクニカル上場<注>の制度を利用して同年4月1日に東京証券取引所に上場する予定。グループ本社と日本製紙の合併に際し、非上場の日本製紙を存続会社としたのは、事業会社である日本製紙の各種許認可を継続させるなど、事業活動に関するさまざまな影響を最小限にとどめるため。
<注>上場会社が非上場会社と合併することによって解散する場合や、株式交換、株式移転により非上場会社の完全子会社となる場合、その非上場会社が発行する株券について、上場廃止基準に定める流動性基準への適合状況を中心に確認し、速やかな上場を認める制度。
 なお日本製紙がテクニカル上場を予定しているのは東京証券取引所のみで、大阪証券取引所、名古屋証券取引所については上場廃止後のテクニカル上場は行わない。
 それぞれの合併の要旨と今後の日程は次の通り。
 【日本製紙グループ本社と日本製紙の合併】
 日程(予定);合併承認定時株主総会(日本製紙)2012年6月22日、合併承認定時株主総会(日本製紙グループ本社)6月28日、上場廃止日13年3月27日、合併の予定日(効力発生日)4月1日
 合併方式;日本製紙を存続会社とする吸収合併方式で、日本製紙グループ本社は解散
 割当ての内容:日本製紙グループ本社の普通株式1株に対して、日本製紙の普通株式1株を割当て交付
 【日本製紙と日本大昭和板紙、日本紙パックおよび日本製紙ケミカルとの合併】
 日程(予定);合併承認定時株主総会(日本大昭和板紙および日本製紙ケミカル)2012年6月21日、合併承認定時株主総会(日本製紙および日本紙パック)12年6月22日、合併の予定日(効力発生日)10月1日
 合併方式;日本製紙を存続会社とする吸収合併方式で、日本大昭和板紙、日本紙パックおよび日本製紙ケミカルは解散
 割当ての内容;合併に際して株式の割当てその他の対価の交付は行わない。

(Future 2012年5月14日号)

王子製紙グループ/インドで段ボール事業の子会社を設立
 王子製紙は、インドでの段ボール事業開始に向け、事業実行の決定に先行して現地法人を設立する。事業実行については、設備投資計画や収益見通しを含む事業計画が、正式な機関決定を得た時点で公表される。
 同社は、経営戦略の中心に置く事業構造転換施策の一つとして、成長国での事業展開を加速させており、段ボール需要の増加と品質要求の高度化が予想されるインドでも、段ボール事業の開始を検討している。最終的な事業計画の決定はまだだが、工場用地の取得を早急に進めるため、先行して現地法人を設立するもの。
 <新会社の概要>
 会社名;Oji India Packaging Private Limited(予定)
 主事業;段ボール箱・シートの製造および販売
 本社所在地;インド・ハリヤナ州グルガオン(工場建設候補地はラジャスタン州ニムラナ工業団地)
 設立時期;2012年6月(予定)
 株 主;王子製紙100%
 授権資本金額;12億ルピー

(Future 2012年5月21日号)

王子製紙グループ/フルフラール製造技術の実証・評価を開始
 王子製紙グループはこのほど、米子工場に「バイオリファイナリー効率的一体型連続工業プロセス」を導入し、木材に含まれるヘミセルロース、セルロースからバイオリファイナリー有価物を連続的に製造する先端技術について、その実証・評価を開始する。同事業は、経済産業省の「イノベーション拠点立地支援事業『先端技術実証・評価設備整備費等補助金』」の対象事業に採択されている。
 ヘミセルロースを原料とするバイオリファイナリー有価物では、まず、石油精製の溶剤などに使用されているフルフラールの製造技術を実証・評価する。フルフラールは今後、バイオマス由来の各種化成品原料や次世代バイオプラスチック原料として期待されている。
 セルロースを原料とするバイオリファイナリー有価物としては、溶解パルプの製造について実証・評価を行う。溶解パルプは上記によって得られた知見に基づき、ケミカル、医療などで使用される特殊用途分野を中心とした高付加価値品への市場参入を目指す。また一般レーヨン用途については、早期に製品化し販売を開始する方針。生産可能量は年間9万t、生産開始予定は2014年1月。

(Future 2012年5月21日号)

日本紙パルプ商事/マレーシアに電材の販社を設立
 日本紙パルプ商事(JP)はこのほど、マレーシアに電子材料専門の販売会社「JP Asian Electronics Materials (M) Sdn.Bhd.」(アジア電材)を設立した。東南アジア市場で、電子部品向け資材販売体制の拡充を図る。
 近年、東南アジアでは電子機器の生産増に伴い、電子部品向け資材の調達ニーズが高まっている。JPは従来から同地域で、日本および現地の拠点を通じてキャリアテープやカバーテープなどを販売し、2002年には中国・上海にキャリアテープの製造会社「JPTS Electronics Materials (Shanghai) Co., Ltd.」(上海電材)を設立している。今後はアジア電材と上海電材の連携を生かした専門性の高いユーザーサポートが可能となり、JPでは、「今後はコンデンサ、抵抗器、インダクタなどの電子部品・機器向け資材および原料の販売拡充にも取り組んでいく」としている。
 <アジア電材の概要>
 所在地;マレーシア・クアラルンプール
 設 立;3月27日
 資本金;100万マレーシアリンギット(2,620万円)
 出資比率;JP90%、JPマレーシア10%
 取締役;有賀雄一郎社長、Guan Swee Kwee(JPマレーシア社長)、太宰徳七(日本紙パルプ商事執行役員−機能材営業本部本部長)

(Future 2012年5月14日号)

凸版印刷/タイで食品用紙器の製造を開始
 凸版印刷とSiam Toppan Packaging Co., Ltd.(本社・タイ)は、サイアムトッパンの第2工場内に高水準の衛生管理が可能な紙器製造ラインを導入、4月から本格稼働を開始した。
 同ラインは、BRC/IOP認証(英国小売協会とパッケージ協会が認証する食品の安全と衛生管理を維持するための包装材に関する国際規格)の「カテゴリー1」を2011年8月に取得している。食品に直接触れる一次包材の製造が可能な「カテゴリー1」の認証取得は、タイの紙器製造会社としては初めて。
 タイは世界でもトップクラスの食品輸出国で、原材料はもちろん缶詰や冷凍、インスタントなどの加工食品まで、世界200ヵ国に年間150億jの食品輸出を行っている。したがって数多くの包材製造企業があるが、これまで一次包材を製造するのに十分な衛生環境を持つ紙器製造企業はなかった。サイアムトッパンでは今後、食品業界向けの一次包材のほか、ファストフードや小売業界向けの食品テイクアウト包材、その他医療医薬品や化粧品業界などへも拡販していく考え。これにより、タイの紙器製造分野における最高品質のモノづくりを継続するとともに、タイ国内のみならずASEAN地域への展開を促進し、2015年度にサイアムトッパン全体で60億円の売上げを目指す。
 凸版印刷とサイアムセメントの日タイ合弁会社であるサイアムトッパン(1990年創業)は、タイ国内最大の紙器製造会社。凸版印刷はパッケージ事業の海外展開を強化しており、中国の上海と深せん、インドネシア、タイなどに生産拠点を設け、日系企業のほかグローバル企業の材料調達や適地生産に向けたソリューションを提供している。今後はインドや南米などへの早期進出も視野に入れ、海外展開を推進する考え。

(Future 2012年4月23日号)

レンゴー/紙なのに燃えにくい防炎段ボールを開発

 レンゴーはこのほど、防炎製品認定基準を満たす「防炎段ボール」を開発した。バーナーで2分間火を当てても燃え広がらず、同社では現在、防炎加工法と間仕切り構造の2件で特許を出願中。すでに、災害時の避難所向けに段ボール製間仕切りと簡易更衣室を商品化しており、その第1号として東京都板橋区に採用された(写真)。商品名は『RAFEP(ラフェップ)』。
 東日本大震災では段ボールが避難所の間仕切りや床敷き用に活躍したが、避難所で火災が発生し段ボールなどに燃え移れば、大きな二次災害を引き起こす可能性もある。そのため最近は、災害用間仕切りなどの防炎製品認定基準が制定されるなど、防炎化に対するニーズが高まっていた。同社の防炎段ボールは、日本防炎協会が認定する防炎製品として、「災害用間仕切り等」「ローパーティションパネル」「展示用パネル」の3品目で認定を取得、特に「災害用間仕切り等」では日本初の認定となる。
 軽くて丈夫な点も特長で、構造用合板2級規格品と比べて重量は約6分の1、強度は同等以上を有している。また、防炎加工に用いられる薬剤は安全無害で、100%リサイクル可能。通常の段ボール同様の加工ができ、オフセット印刷での美粧印刷も可能なので、同社は間仕切り以外にも建材、フィルター類、自動車関連部品など、これまで段ボールが使用されていなかった分野への用途拡大も見込んでいる。

(Future 2012年5月7日号)

特種東海製紙/ゼオライト機能を生かした不織布のサンプル申込み受付けを開始
 特種東海製紙はかねて、分子レベルでの高い吸着性を持つゼオライトを素材の一部に使った不織布の開発を進めてきたが、このほど3.11東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故によって飛散した放射性物質を吸着させる、検証サンプルとして提供することになった。4月半ばから検証サンプルの申込みを受け付けている。
 ゼオライトは、直径が分子レベル(ナノ単位)の非常に細かい孔を持ったアルミノケイ酸塩の結晶性化合物。加熱すると、この孔内に吸着したガスや水が沸き出すように出てくることから、和名では沸石(ふっせき)と呼ばれる。
 天然では数百万年以上の時間をかけた火山活動によって形成される鉱物だが、現在は人工的にケイ酸塩ナトリウムやアルミン酸ナトリウムなどを原料にして、さまざまな種類のゼオライトが作られている。
 微細なトンネル状の孔とその周囲のイオンの働きによって、いわば篩(ふるい)の役割を果たすことから、農地改良用のみならず、イオン交換機能を利用した浄水処理、軟水化処理などに利用されている。例えば近年では、合成洗剤でリン成分に代わって使われるようになったアルミノケイ酸塩。これが軟水化作用を果たして洗浄効果を維持するのだという。また、触媒効果や吸湿効果を生かした商品開発にも使われている。
 今回の原発事故によって、セシウムやストロンチウムという放射性物質の名称や半減期という専門用語が一般にも広く知られるところとなり、放射能の人間への健康影響や自然環境への蓄積影響など不安は拭い切れない。
 そうした中でゼオライトの吸着性を利用した除染対策に期待が集まっている。農業用途としての下地もあるためか、粉末にしたゼオライトを使った除染剤も、インターネットの画面にはかなり登場している。
 ただし粉末のゼオライト使用には課題も少なくない。除染するために、農地や水田では粉末にしたゼオライトの散布も検討されていると言われるが、均一な散布が難しく、どうしても人手や手間がかかる。また散布したゼオライトが放射性物質を吸着してもその回収が困難であり、さらに吸着したゼオライトが風雨によって他の土地へ飛散したり移着してしまう、といった懸念も残る。
 そこで、結露防止シートや調湿シートなどで長年にわたり不織布を製造してきた同社は、その技術や知見をフルに活用。不織布と不織布の層間にゼオライトを均一に固着化させた『ゼオライト不織布』の開発に成功した。この不織布には、放射性物質が飛散・移着しにくい材料が使われている。この不織布の主な特長として、以下の点を挙げている。
 ・放射性セシウムを不織布内部に吸着、かつ閉じ込めることが期待できる
 ・用途に応じて適切な不織布を選択できる
 ・不織布表面からのゼオライト粉末の脱落が起こりにくい
 ・水に濡れても強度の低下がほとんどなく、耐久性に優れた不織布を使用
 ・施工しやすいように、特殊加工により柔軟性を付与
 ・枚葉やロールの形状で提供でき、断裁や折り畳みなどの加工も可能
 この不織布は屋内外を問わず使用が可能であり、汚染水や土壌中の放射性セシウムの飛散あるいは移着防止が期待できる。また、土地や建物に簡便かつ均一に敷き詰めることができるので、施工の手間を大幅に軽減。使用後も不織布を巻き取ることができるため、効率的な回収が可能となっている。
 同社では今後、引き続きサンプル提供を続けて放射性物質の吸着性能に関する実証実験を行い、性能の一層の向上と幅広い実用化を目指す。用途開発は代理店の新生紙パルプ商事を通じて進め、除染事業への貢献に努める考えだ。
 この不織布の開発が今後の業績見通しに寄与する可能性について同社は「当面は軽微」としているが、実証実験結果によって製品化の可能性と生産販売予測を見極めた上で、開示していくという。除染作業の進捗と効率化という点でも、期待を集めそうだ。

(Future 2012年5月7日号)

王子キノクロス/セシウム除染用ゼオライト不織布
 王子キノクロスはこのほど、放射性セシウムの吸着材料として使用できる可能性がある、セシウム除染用ゼオライト不織布の開発・商品化に成功した。
 ゼオライトは高いイオン交換能を持つ鉱物で、以前から水質改良材として用いられてきた。さまざまなイオンを交換・吸着するが、特に放射性同位元素を含む汚染水の処理では、放射性セシウムを吸着する研究例が報告されている。
 王子キノクロスでは、独自技術のTDSプロセス(Totally Dry System)によって製造したゼオライト不織布が、放射性セシウムの吸着性に優れると考え、開発を進めてきた。TDSプロセスとは、目的に応じた表裏面材を使用し、中層はパルプに熱融着性の繊維や粉体をブレンドしたものをエアレイド法でウエブを形成、オーブンで熱接着させる仕組み。水を一切使用しないため、粉体・繊維などの機能を損なわない状態でシート化でき、合成繊維100%不織布も可能。水系の接着剤を使用せずに不織布内部に多量のゼオライトを保持できるため、ゼオライトの機能を最大限に発揮できる。
 TDSプロセスで製造するゼオライト不織布は、ゼオライトの含有量をコントロールできることに加え、用途に応じて表裏の不織布素材や処方を変え、柔軟性、強度、耐水性をコントロールできる。使いやすくコンパクトなため、セシウム汚染水の除染用として期待される。
 ゼオライト不織布の性能については、東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻の三村均教授に評価を依頼。その結果、海水、アルカリ性液体、酸性液体、それぞれの条件の汚染水からセシウムを吸着でき、従来の粒状ゼオライトよりも高機能化が可能で、セシウム吸着速度の向上、物理化学的安定性など優れた性能を持つことが明らかになった。さらに、実際の放射性セシウムを使用した評価でも吸着性能が確認できている。この結果は、12年9月の日本原子力学会と13年2月の放射性廃棄物処理国際会議で発表される予定。
 また、汚染水だけでなく汚染された土壌や樹木についても水を介在させることによって除染できる可能性が高いことから、現在ゼオライト不織布を用いた除染の実用評価を進めている。

(Future 2012年5月21日号)

レンゴー/放射線遮蔽シートを開発
 レンゴーと日本マタイはこのほど、放射線を遮蔽し線量を軽減する『放射線遮蔽シート』を共同開発した(特許出願済)。
 放射線の遮蔽には従来、固く重い金属板が使用されてきたが、両社が開発した『放射線遮蔽シート』は、熱可塑性エラストマーを素材とし、軽量かつ柔軟性に富んだ遮蔽材。外部からの放射線を低減したい部屋用の遮蔽材や、除染時に発生する汚染廃棄物の仮置場での保管用カバーシートなどで使用できる。
 レンゴーグループの重包装部門を担う日本マタイは、産業向け袋包装のパイオニアとして知られ、特にフレキシブルコンテナバッグの分野では国内最大手。海外でも評価は高く、同社の『MAICON(マイコン)』ブランドは世界の標準となっている。
 『放射線遮蔽シート』は、放射線に関する知見があるレンゴー中央研究所と、重量物向け包装や樹脂加工の技術を持つ日本マタイ研究所のコラボレーションにより開発された。高い空間放射線量を示す地域で実証テストを重ね、特許が出願されている。シートの厚さは1〜2mmで、幅は500〜2,000mm、用途に合わせて大きさを変えて使用でき、枚数を重ねて放射線の遮蔽率を高めることも可能。レンゴーでは、壁材や床材などの建材ほか、カーテンやカーペットなどの内装材、除染時の仮置場での保管用カバーシート、除去草木や側溝のカバーシートなどの用途に期待を寄せている。

(Future 2012年5月21日号)

紙・板紙3月需給/国内出荷は7ヵ月ぶりの前年比プラスに
 日本製紙連合会が集計した3月の紙・板紙国内出荷は前年同月比1.9%増の225.8万tで、前年8月以来7ヵ月ぶりのプラスとなった。うち、紙は2.9%増の131.1万tと7ヵ月ぶり、板紙は0.5%増の94.7万tと2ヵ月連続で、それぞれ前年実績を上回っている。主要品種では包装用紙、衛生用紙を除き増加した。
 紙・板紙のメーカー輸出は前年同月比38.7%減の5.7万tで、こちらは19ヵ月連続の減少。震災以降、紙を中心に国内向けの優先や円高の為替事情により大幅な減少が継続しているものの、落ち幅は縮小傾向にある。
 紙・板紙の生産は前年同月比2.8%増の231.5万tで、うち紙が3.3%増の136.3万t、板紙が2.1%増の95.2万tだった。
 紙・板紙の在庫は前月比1,200t減の200.9万tと4ヵ月ぶりに減少した。うち、紙は同+2,300tの141.3万tと6ヵ月連続で増加したが、板紙は同▲3,500tの59.6万tと2ヵ月連続の減少となった。なお震災などに伴う滅失分(期末処理)は1,000tに上り、累計では7万t(紙6.3万t、板紙0.7万t)に達している。
 主要品種の動向は次の通り。
 〔新聞用紙〕国内出荷は前年同月比12.5%増の30.0万t。昨年3月の震災の反動増から大幅な伸びとなり、ほぼ2年前の水準まで回復している(2010年比1.5%減)。
 〔印刷・情報用紙〕国内出荷は前年同月比3.4%増の71.7万tと、同じく震災の反動増により7ヵ月ぶりの増加となったが、輸入の大幅な増加が影響し前々年同月の水準には届いていない(2010年比9.6%減)。輸出は45.5%減の4.0万tと量的には回復傾向も、主力の塗工紙を中心に18ヵ月連続の減少である。
 〔包装用紙〕国内出荷は前年同月比5.3%減の7.1万t。特に晒包装紙の不振(11.8%減)が影響し、6ヵ月連続のマイナスだった。
 〔衛生用紙〕国内出荷は前年同月比9.9%減の16.0万t。昨年3月の震災特需の反動からマイナス幅が大きくなった。
 〔段ボール原紙〕国内出荷は前年同月比1.3%増の75.6万t。伸び率は鈍化したが2ヵ月連続の増加。
 〔白板紙〕国内出荷は0.4%増の12.6万tと、ほとんど横ばいも5ヵ月ぶりに増加した。

(Future 2012年5月14日号)

日本製紙連合会/新会長に日本製紙の芳賀義雄社長

 日本製紙連合会は5月10日に定時総会を開催、任期満了を迎えた篠田和久氏の後任新会長に日本製紙社長の芳賀義雄氏を選出した。2008〜10年に続き二度目の登板となる。
 芳賀義雄氏は1949(昭和24)年12月24日生、熊本県出身。74年4月十條製紙(現 日本製紙入社)。2004(平成16)年6月取締役、05年6月兼日本製紙グループ本社取締役、06年4月日本製紙常務、08年6月日本製紙グループ本社代取社長兼日本製紙代取社長就任、現在に至る。
 なお、このほか副会長として王子製紙・進藤清貴社長、レンゴー・大坪清社長、北越紀州製紙・岸本晢夫社長、三菱製紙・鈴木邦夫社長の4名が選出されている。

(Future 2012年5月21日号)

レンゴー/利根川事業所をリニューアル

 レンゴーはこのほど茨城県坂東市の利根川事業所を大幅リニューアルした。
 利根川事業所は製紙・加工・紙器の3工場からなる、レンゴー最大級の敷地をもつ基幹事業所。年間約32万tの板紙(段ボール原紙と白板紙)を生産するほか、美粧段ボール用原紙の印刷や、防水・防錆機能などを付与した多彩な加工紙、そしてマルチパックを中心とした紙器製品を生産している。
 今回のリニューアルは、昨年50周年を迎えたのを記念して進められていたプロジェクトであり、バイオマス焼却設備の設置、1号抄紙機(白板紙)の改造、紙器工場の自動ラック倉庫新設、本館事務所棟の全面建替えなど、業務の合理化・効率化と同時に、レンゴーの環境キーワードである“軽薄炭少”(軽い、薄い、CO2排出量が少ない)を目指して実施された。
 リニューアルの主な内容は次の通り。
 (1) バイオマス焼却設備の設置
 生産過程で発生する製紙スラッジなどの廃棄物をボイラー燃料として有効に活用。これまで焼却処理していた廃棄物を有効活用することによって、年間約6,000tのCO2排出量削減を見込む。
 (2) 1号抄紙機の改造
 抄紙工程の最初の部分になるワイヤーパートを更新し、印刷適性の向上をはじめコート白ボール(白板紙)のさらなる品質向上を実現(写真)。
 (3) 紙器工場自動ラック倉庫の新設
 製品の入庫から出庫までの作業を機械化することで、作業の効率化と安全性の向上を図り、在庫管理をシステマチックに行う。
 (4) 本館事務所棟の全面建替え
 屋上にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行うとともに、館内にはLED照明や人感センサーなどを設置。全面的に環境配慮型の設計となっている。
 (5) 自然エネルギーの有効活用
 本館事務所棟以外にもソーラーパネルを設置したほか、小型風力発電により街路灯の電源も賄うなど自然エネルギーを有効に活用。

(Future 2012年4月23日号)

ニッポン高度紙工業/高知県J-VER制度で認証を取得
 ニッポン高度紙工業はこのほど安芸市畑山の社有林(五位ヶ森)における森林保全活動で、民間企業としては初めて高知県J-VER制度に認証された。
 高知県J-VER制度とは、環境省が認める「都道府県J-VERプログラム」の1つとして、カーボ ン・オフセットを行う際に必要なクレジットを高知県の認証運営委員会が独自に発行・認証する制度。
 同社は昨年3月、2010〜12年度の間伐作業でCO2を 吸収できるとして高知県J-VER制度に登録が認められ、第三者機関により計測方法などの審査が進められていた。 その結果、まず2011年12月までに間伐した社有林37.05haで401tのCO2吸収が認証された。残りについても今後審査される予定。 また、認証された吸収量は国のCO2吸収量取引市場で売買できる。

(Future 2012年4月23日号)

北越紀州販売/河野商事などから事業を譲受
 北越紀州販売は4月1日付で、河野商事の全事業、三矢化成の一部事業、北越トレイディングの一部事業を譲り受けた。
 〔譲受対象事業〕
 河野商事;繊維板(パスコ)、バルカナイズドファイバー、氷晶石の販売事業
 三矢化成;工業薬品などの販売事業
 北越トレイディング:パルプ・化学品などの仕入・販売事業

(Future 2012年4月16日号)

日本紙パルプ商事/インド事業拡大に向け現地紙商の株式を取得
 日本紙パルプ商事(JP)は、インドの紙卸売会社KCT Trading Private Limited(KCT社)株式の49%を取得した。
 JPは「JPグループ中期経営計画2013」を策定し、既存事業の収益力強化とともに海外事業、資源・環境など関連事業の拡大を図っている。海外事業については紙・板紙卸売業、段ボール製造販売、製紙原料販売、家庭紙製造販売などの事業を展開しつつ、グローバル調達・販売ネットワークの拡充を進めている。
 KCT社はコルカタに本社を置き、ムンバイ、デリー、チェンナイといった主要都市を中心にインド全土をカバーする販売網をもつ。今回の株式取得と業務提携によりJPは現地市場に根付いた販売体制を構築し、持続的な成長が見込まれるインドでの事業拡大と顧客サービスの向上を目指す。また、インド産製品の欧米・アジアへの販売にも取り組む。
 〔KCT社の概要〕
 本 社;インド・ウェストベンガル州コルカタ
 事 業;紙・板紙の卸売販売
 売上高;2011年3月期19億8,043万8,000ルピー(32億6,772万3,000円)
 代表者;Priya Saran Chaudhri(Managing Director)

(Future 2012年4月16日号)


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