業界ニュース

日印産連/通常総会と懇親会を開催
 日本印刷産業連合会(会長・猿渡智大日本印刷代取副社長)は6月8日、都内で通常総会を開催。2010年度の事業報告や11年度の事業計画など、すべての議案が原案通り承認された。
 このうち事業報告では年度末の3月11日に発生した東日本大震災と、その後の原発事故が印刷産業に及ぼした影響の大きさについて、多くの紙数が割かれた。また調査研究委員会の活動として、古紙再生促進センターの委託を受けリサイクル対応型紙製商品開発促進事業に引き続き取り組み、印刷物製作ガイドラインの補足や普及方策の提言を行ったことなどが報告された。
 一方、事業計画では11年度の重点事項として@会員10団体との連携による経済活動活性化の促進 A印刷文化展/印刷産業将来ビジョンの発表 B公益法人制度改革への対応(一般社団法人化) C温暖化防止、グリーン基準の充実、循環型社会形成など環境対応の推進  Dグローバルネットワークの構築とWPCF、FAGAT(前者は世界の、後者はアジア太平洋地域の印刷技術情報フォーラム)などを活用した有意義な情報収集・発信 Eグリーンプリンティング認定制度やプライバシーマーク審査の拡充を掲げた。
 また11年度の事業活動に関わる収支予算は、収入が2億2,484万円(前年度予算比▲1,409万円)、支出が2億3,565万円(同+51万円)となっている。
 なお総会後の理事会では常任理事として新たに堆誠一郎(印刷工業会副会長)、生井義美(全印工連専務理事)の両氏が選任されたほか、文科省の所管する原子力損害賠償紛争審査会に、専門委員として浅野健副会長を派遣する案が承認された。
 理事会終了後は経産省や紙業界の来賓も交えて懇親会が催され、冒頭に主催者を代表して猿渡会長が「昨年のこの時期は不安定な政局下で総会が開催され、私が会長に選任された。今年も同じような状況下にあるが、東日本大震災の後だけに遅滞のない復興政策の立案と実行が求められている。原発の処理と復興には多くの時間と支援が必要と考えられるが、われわれとしては自粛ではなく経済活動を継続していくことで、お役に立てればと思う。印刷産業が底力を発揮し、IGAS 2011などさまざまなイベントで被災地の方々を元気づけ、支援していきたい」と挨拶。
 続いて水上光啓副会長(全印工連会長、水上印刷社長)が「被災地を視察したが、日頃から口数の多い私が寡黙になるくらい厳しい状況だ。組合ができることは何なのか、と改めて考えさせられた。私は10年前、ニューヨークで9.11に遭遇したが、当時のジュリアーノ市長は『なるべく普段と同じように生活しよう』呼びかけて、地域を復興させた。われわれもそれに倣って、華美にはならず、しかしお金を使ってサポートしていく必要がある」と述べて乾杯の発声を行い、定刻すぎまで歓談が続いた。
レンゴー/第35回木下賞で包装技術賞を受賞
 レンゴーはこのほど、潟Nレハと共同開発した抗菌機能付き水切リゴミ袋『クレハ キチントさん ダストマン』で、日本包装技術協会が主催する「第35回木下賞」の包装技術賞を受賞した。
 『クレハ キチントさん ダストマン』は、同じく第29回木下賞で研究開発部門賞を受賞した、レンゴーの高機能パルプ『セルガイア』を使用した水切りゴミ袋。優れた抗菌、防臭、ヌメリ防止機能を持ち、水切ゴミ袋市場に“抗菌機能付”という新たな市場を創出したことが高く評価された。
 なお「第35回木下賞」では、王子パッケージングが竃セ治、大日本印刷と共同開発した『明治ステップらくらくキューブの包装開発』も、新規創出部門賞を受賞した。

(Future 6月20日号)

藤原科学財団/「第52回藤原賞」は十倉好紀・相田卓三の両氏

 公益財団法人の藤原科学財団は6月17日、東京・神田錦町の学士会館において「第52回藤原賞贈呈式」を挙行した。今回の受賞者は東京大学大学院の工学系研究科物理工学専攻・十倉好紀教授と、同じく工学系研究科化学生命工学専攻の相田卓三教授で、対象となった研究業績はそれぞれ「物質中の巨大な電気磁気応答創成」と「“次元・階層構造”の精密設計による革新的高分子新物質の創成」
 この藤原賞はわが国で“製紙王”と呼ばれた藤原銀治郎の創設によるもので、資源に乏しく国土の狭い日本は世界トップクラスの科学技術国になってほしいとの熱い思いが込められている。藤原翁が社長を務めた旧王子製紙、つまり“大王子”時代の1938(昭和13)年東京大学などの主要大学に総額267万円(現在価値約90億円)という当時では破格の寄付を会社として行ったのをはじめ、社長退任の際には私財800万円(約280億円)と投じ藤原工業大学(現慶応大学理工学部)を設立、さらに90歳の時には私財1億円を投じて「藤原科学財団」を設立、その翌年からわが国の科学技術発展に貢献した科学者を表彰し副賞賞金を贈る藤原賞がスタートした。現在も藤原翁の精神を王子製紙および日本製紙が引き継ぎ、財団運営で重要な役割を果たしている。
 当日は同財団専務理事の坂荘二氏(元日本製紙副社長)による司会進行でスタート、まず鈴木正一郎理事長(王子製紙代表取締役会長)が挨拶に立ち大要以下のように述べた。
 「今年の藤原賞では各方面から推薦いただいた38件に関し数次にわたり開催した選考委員会により慎重かつ公平に審査し、その結果十倉先生および相田先生に決定した。両先生の研究は国内のみならず海外からも高い評価を受けており、まだ若いことから今後の更なる研究成果発展が期待されている。
 当財団は藤原銀治郎翁が昭和34年90歳の時に日本の科学技術振興を願い私財をなげうって設立、現在もその精神を受け継ぎ2つの事業活動を行っている。その1つがこの藤原賞であるが、もう1つの事業として“藤原セミナー”も開催があり、講演内容を一般から公募して2件のテーマを採用、その研究者に対しセミナー開催の経済的支援を行っている。昨年度は第59、60、61回の3件のセミナーを開催、今年度は2件のセミナーを開催予定である。それぞれ国内外の一流の先生方に集っていただいて起居をともにし、研究テーマに関し語り合うとともに人間的交流を深めてもらうののが目的であり、自由な雰囲気のなかで開催されるセミナーとして高い評価をいただいている。
 少し古い話になるが、1993年の第34回藤原賞を東京大学の宇津徳治名誉教授が受賞された。先生の受賞研究テーマは“日本周辺の地震活動と治下構造に関する研究”というもので、同研究は世界の地震学の発展に大きく貢献されたが、今回われわれ大きな震災を受け、自然科学者が取り組まなければならない課題がまだ多く残されていることを改めて知らされた。当財団はこの藤原賞と藤原セミナーの2つの活動を通じ、今後とも自然科学の進展のために活躍していきたいと考える」
 鈴木理事長挨拶の後、東京大学名誉教授の山崎敏光選考委員長から選考経過の報告と受賞者の研究業績が紹介され、次いで藤原賞の贈呈および受賞者挨拶などが行われて藤原賞贈呈式が終了。場所を同館パーティ会場に移し引き続き祝賀パーティが催された。
 〔受賞者略歴〕
 十倉好紀(とくら・よしのり) 1964(昭和29)年3月1日生まれ。76年東京大学工学部理工学科卒業。81東京大学大学院工学系研究科博士課程終了(工学博士)後、東京大学工学部物理工学科助手、84年同講師、86(平成6)年東京大学理学部物理学科助教授、94年同教授、95年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授、2007年理化学研究所基幹研究所研究所グループディレクター併任、現在に至る。主な受賞歴;90年仁科賞、日本IBM科学賞、91年Bernd Matthias Prize、98年日産科学賞、02年朝日賞、03年紫綬褒章、05年James C. McGroddy Prize
 相田卓三(あいだ・たくぞう) 1956(昭和31)年5月3日生まれ。84年東京大学大学院工学系研究科博士課程終了(工学博士)後、東京大学工学部助手、88年同講師、90(平成2)年東京大学大学院工学系研究科助教授、96年同教授。99〜2001年岡崎国立共同研究機構教授併任(分子科学研究部門)、00〜10年科学技術振興機構ERATO/ERATO -SORST研究総括責任者、07〜12年理化学研究所・物質情報変換化学研究グループディレクター。主な受賞歴;88年日化進歩賞、93年高分子学会賞、99年Wiley高分子科学賞、日本IBM科学賞、00年名古屋メダルシルバー、東京テクノフォーラムゴールドメダル、05年井上学術賞、Arthur K. Doolittle賞、08年Chirality Award、錯体化学貢献賞、09年米国化学会賞、日本化学会賞、10年紫綬褒章、11年Humboldt Reseach Award


 〔写真説明〕
 藤原賞を受賞した相田卓三氏(左)と十倉好紀氏

(紙パルプ技術タイムス7月号)

紙パ決算/震災損失は6社合計で873億円に
 紙パルプ関連企業の2011年3月期決算が出揃った。製紙のウェイトが高くないリンテックも含めた株式上場10社の連結業績は売上高が前期比+2.1%の4兆304億円、経常利益が同▲5.4%の1,684億円で利益率4.2%と増収減益。また会計年度末直前に起こった東日本大震災が特別損益に悪影響を及ぼした結果、最終利益は▲88.6%の101億円と大幅に落ち込んだ。期を通じて見れば販売数量の減少と製品価格の軟化、原燃料価格の上昇が各社の懸命な合理化・コストダウン努力を吹き飛ばした一年だったと言える。以下、各社ごとに連結業績のハイライトを紹介する。

【王子製紙】
<10年度の概況>
 グループではここ数年、成長するアジア需要の取り込み、素材加工一体型ビジネス・研究開発型ビジネスの拡大などによる事業構造の転換を図っているが、この10年度は東南アジアの段ボール会社であるGS Paper &Packagingなどの買収、中国・南通プロジェクトの生産設備稼働、旭洋紙パルプの連結子会社化による商事機能強化などを行った。また、既存事業においては徹底して効率的な生産に努めるとともに、需要に見合った生産体制への移行などにより固定費を中心としたコストを大幅に削減し、原燃料価格上昇影響の吸収を図った。
 この結果、売上高は前期比+2.9%の1兆1,801億円と増収を果たしたものの、営業利益は同▲11.2%の654億円、経常利益は▲6.9%の602億円と、いずれも減益を余儀なくされた。さらに東日本大震災ではグループの製品在庫や工場建物の一部が被害を受け、この災害による損失を特損に計上したことなどから最終利益は▲1.1%の246億円となった。
<部門別状況>
〔紙パルプ製品事業〕売上高は▲0.3%の5,603億円、営業利益は▲5.5%の498億円で利益率8.9%。
 〈板紙〉のうち「段ボール原紙」の販売は、天候不順の影響により青果物出荷が減少したが、工業製品・飲料関係の出荷が堅調であったため微増。「白板紙」の国内販売では特殊板紙が若干増加したものの、高級白板紙とコート白ボールは微減となった。〈包装用紙〉の国内販売は、上期に景気回復傾向による需要の増加があったため、下期が低調に推移したものの通年では前年を上回った。また輸出はアジア向け需要が堅調に推移した。
 〈一般洋紙〉のうち「新聞用紙」の販売は、国内が新聞各社の部数・頁数の低迷から減少し、輸出もマイナスだった。「印刷用紙」の販売は、国内が出版・商業印刷分野の需要減少により塗工紙を中心として低調に推移。対照的に輸出では、塗工紙を中心にアジア向けの販売が増加している。このほか〈雑種紙〉の販売は、国内・輸出ともに微増だった。
〔紙加工製品事業〕売上高は+1.4%の4,500億円、営業利益が▲12.3%の151億円で利益率3.4%
 〈段ボール(シートケース)〉の販売は、天候不順の影響から青果物向けが減少したが、夏場の猛暑による飲料関係の増加、電機向けの回復により微増となった。〈その他〉のうち「衛生用紙」の販売はティシュ、トイレットロールともに低調。「紙おむつ」は子供用でパンツ型が増加し、テープ型が減少。大人用では尿パッドが減販となった。
<11年度の見通し>
 紙の国内需要の大幅な回復が見込めない中、原燃料価格も上昇傾向にあり、外部環境は厳しさが増すと想定しているが、グループとして引き続き事業構造の転換を推進し、中国・南通プロジェクトをはじめとするアジア需要の取り込み、また国内においては需要に見合った生産体制を実現することで設備稼働率を高め、適正な製品価格と利益率の確保に取り組んでいくとしている。
 これにより11年度の業績は売上高1兆2,500億円(10年度比+5.9%)、営業利益620億円(同▲5.3%)、経常利益570億円(▲5.4%)、最終利益280億円(+13.7%)を見込んでいるが、東日本大震災の影響により先行きの不透明感が強いため、実際の業績は予想値から大幅に変動する可能性もあるとしている。

【大王製紙】
<10年度の概況>商業印刷分野を中心とした需要の低迷、輸入紙の増加など厳しい経営環境下で、グループとして高付加価値商品の開発・拡販を推進し、既存設備の生産効率向上や変動費・固定費の削減といった諸施策を実施することで収益力の強化を図ったが、売上高は前期比▲3.1%の4,101億5,900万円と減収、営業利益は同▲41.9%の132億2,700万円、経常利益は▲60.2%の55億1,500万円と大幅な減益を余儀なくされ、また先に公表していた通り、中国合弁事業の出資比率引き下げや東日本大震災に伴う特損を計上したことにより最終損益は▲80億8,400万円と赤字になった。
<部門別状況>
〔紙・板紙〕売上高は▲3.0%の2,833億8,900万円、営業利益は▲40.3%の118億5,500万円で利益率4.2%(表4に記載の対前年増減はセグメント間の移動を考慮していない=以下同)。
 〈新聞用紙〉は広告出稿量の減少などの影響により、販売数量・金額ともに前期を下回った。〈印刷用紙〉は各企業が広告宣伝費を削減する中、市場全体の本格的な回復には至らず販売数量・金額ともに前期比ダウン。〈段ボール〉は、夏場の猛暑や冬場の寒波の影響により青果物関係の需要が軟調に推移したものの、エコカー補助金や家電エコポイントなどの政策により個人消費が持ち直し、リーマンショック以降、軟調に推移していた自動車・電機関係の需要が回復傾向になったことから、販売数量・金額ともに前期を上回った。
〔紙加工製品〕売上高は▲3.3%の1,200億1,800万円、営業利益は▲31.8%の47億5,500万円。
 〈衛生用紙〉のうちティシュではフェイシャル用途に特化した『エリエール+Water』を新規上市し、保湿タイプの品質が受け入れられた結果、販売数量は順調に伸長したが、汎用品における販売価格下落の影響を受け、販売数量・金額ともに前期を下回った。
 〈ベビー用紙おむつ〉は、猛暑の影響でスイミング・水遊び用途向けの『GOO.Nスイミングパンツ』の需要が堅調に推移したことなどから、販売数量・金額ともに前期比プラス。〈大人用紙おむつ〉の『アテント』では、高齢者人口の増加に伴い軽度の失禁対象者が増加している実態に鑑み、下着に装着できる『アテント下着につける尿とりパッド』を新規上市するとともに、『アテント股モレブロックうす型パンツ』の柔らかさを向上させたリニューアルを行い、新規顧客の獲得と配荷拡大を進めた結果、販売数量・金額ともに前期を上回った。
 〈生理用ナプキン〉はスリムタイプで『Megami』を全面リニューアルするとともに、伸長カテゴリーの軽失禁用品では、使い捨て軽失禁ライナーにおいて日本初となる羽つきタイプを『ナチュラ』ブランドで新規上市したことが奏功し、販売数量は前期を上回ったものの、販売価格下落の影響を受け金額は前期並みにとどまった。
〔その他〕売上高は▲2.7%の67億5,000万円、営業利益は+162.0%の6億7,200万円。
<11年度の見通し>
 さらなる原価低減・経費削減に努めるとともに、既存事業の充実・発展と、成長が見込まれる事業を拡大させることにより収益力の向上と財務体質の改善を図り、より強固な経営基盤・企業体質を確立していくとしており、売上高4,280億円(10年度比+4.3%)、営業利益143億円(同+8.1%)、経常利益65億円(+17.8%)、最終利益30億円を予想している。

【中越パルプ工業】
<10年度の概況>
 「低操業下でも収益の出せる企業体質の実現」を目標に、減産下における最適生産体制の構築とエネルギー原単位の改善、さらに川内工場オイルレス操業の実現に向けたパルプ生産の最大化と外販の拡大、徹底的な経費削減に取り組んだ。しかし低調な需要や市況弱含みの影響を受け、コスト削減効果を十分に発揮するには至らず、売上高は前期比+3.4%の1,037億9,800万円、営業利益は同▲12.1%の21億2,700万円、経常利益は▲2.5%の16億9,800万円、最終利益は約13倍の3億1,700万円となった。操業トラブルで生産が落ち込んだ前期との対比では増収を記録したが、各段階の利益は低調だった。
<部門別状況>
〔紙・パルプ製造〕売上高は865億5,200万円、営業利益は12億2,200万円で利益率1.4%(セグメント変更により前年比は算出できない=以下同)。
 〈一般洋紙〉のうち「新聞用紙」は、電子化などによる広告出稿の減少に伴う発行部数落ち込みや減頁の影響を受け減販となった。「印刷情報用紙」は、国内において減税や家電エコポイントに伴うパンフレットやチラシの需要増、海外でも上海万博やサッカーW杯などのイベントがあり回復の兆しも見られたが、価格については弱含みで推移した。
 〈包装用紙〉は、輸出産業を中心とした需要回復の影響を受けて回復傾向にあり、数量は若干ながら増加。ただし価格については弱含みだった。〈特殊紙・板紙および加工品〉では従来の取引先との関係を密にするとともに、新規需要先の開拓、拡販に努めた結果、国内景気の回復もあり若干の増販となった。価格は横バイで推移した。
〔その他〕売上高は172億4,500万円、営業利益は8億700万円。〈紙加工品製造事業〉では「包装用紙関連」が好調に推移し、「印刷用紙関連」は前年同期比ほぼ横バイだった。このほか〈運送事業〉や〈建設事業〉についても前年の低水準な景況を脱し総じて堅調に推移した。
<11年度の見通し>
 3ヵ年で経常利益を30億円上乗せする「プラス30計画」の確実な実践、川内工場パルプ生産最大化工事メリットを確実に達成していくほか、本社機能移転効果に伴う高岡工場の強化、棚卸資産の適正在庫管理強化などに取り組むとともに、地産・地消を推進するため北陸・福岡営業所と工場製造部門の連携強化に努め、収益向上を着実に果たしていくとしており、売上高1,020億円(10年度比▲1.7%)、営業利益14億円(同▲34.2%)、経常利益10億円(▲41.1%)、最終利益2億円(▲36.9%)を見込んでいる。

【特種東海製紙】
<10年度の概況>
 10年度はグループとして原価低減活動や生産効率の改善などを推進、収益の確保に取り組んだ。その結果、業績は売上高が前期比+1.7%の793億6,300万円、営業利益が同▲11.4%の38億3,900万円、経常利益が▲6.5%の37億5,000万円となり、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額、時価の下落による投資有価証券評価損などを特損に計上した後の最終利益は▲53.1%の8億3,900万円にとどまった。
<部門別状況>
〔産業素材事業〕売上高は+1.1%の390億1,000万円、営業利益は▲42.8%の5億8,700万円と増収減益。主力製品の〈段ボール原紙〉は景気回復傾向に伴う需要の持ち直しに加えて、猛暑による飲料関連の需要増などの増益要因があったものの、10〜12月期以降は原燃料価格の上昇が収益圧迫要因となった。〈クラフト紙〉についても同様の傾向で推移した。
〔特殊素材事業〕売上高は+4.1%の225億4,100万円、営業利益は+13.9%の25億1,300万円と増収増益。〈特殊機能紙〉では品質優位性の高い製品の販売が堅調に推移し、販売数量・金額とも前年同期を上回った。一方〈特殊印刷用紙〉は、主力製品の「ファンシーペーパー」「高級印刷紙」とも期初に一時的な回復傾向を示したものの、夏場からの景気減速を受けて7〜9月期以降は厳しい状況だった。年度末の需要期も東日本大震災の影響を受けて受注が減少し、通期では数量・販売金額ともに前期比マイナスだった。
〔生活商品事業〕売上高は▲0.0%の153億1,900万円、営業利益は▲24.5%の7億1,600万円と減収減益。主力製品の〈ペーパータオル〉は競争激化や輸入品の台頭による影響、小サイズ・低坪量化の進行、数量維持のための価格対応などにより減収を余儀なくされた。一方、ラミネート加工を中心とした〈紙加工事業〉については、拡販が寄与して増収となった。このほか〈トイレットペーパー〉の需要は堅調に推移したが、販売価格は期央より下落した。
<11年度の見通し>
 東日本大震災の影響により国内景気が先行き不透明な状況の中、グループとして積極的な営業活動や経営の効率化を追求し、継続的な収益確保に努めていくとしているが、その一方で原燃料価格の上昇や電力供給の不足などが懸念されることから、売上高800億円(10年度比+0.8%)、営業利益31億円(同▲19.3%)、経常利益30億円(▲20.0%)、最終利益14億円(+66.7%)を見込んでいる。

【巴川製紙所】
<10年度の概況>
 売上高は前期比5億7,300万円減収の416億2,600万円(▲1.4%)となった。利益面については09年度に引き続き総合的な経営合理化策を推進、大幅なコスト削減を達成し収益力が向上する中で、特に1〜3月期に収益性の高い製品群の出荷があったことなどから、10年度における営業利益は前期比+11億9,500万円増益の25億8,100万円(86.3%増)となり、経常利益は前期比+12億8,000万円増益の24億8,400万円(+106.3%)を記録。また最終利益は特別利益に投資有価証券売却益(1億4,200万円)を計上したこともあり、前期に比べ13億3,400万円増益の17億2,500万円(+342.2%)となった。
<セグメント情報>
主力の〔プラスチック材料加工事業〕では、FPD関連製品が新製品の投入効果や来期モデルの受注などで年度を通じて好調に推移。上期好調だった化成品(トナー)は、下期に入って在庫調整と円高の進行から国内販売が低調になったものの、海外子会社の生産・販売は比較的堅調に推移した。夏場以降に在庫調整局面に入った半導体関連製品は、10〜12月期を底として再び受注が持ち直してきた。この結果、売上高は278億4,400万円と前期比3億9,100万円(▲1.4%)の微減だった。利益面では新製品投入効果や収益改善対策効果により、営業利益が25億700万円と前期比10億5,300万円(72.4%増)となった。
〔製紙・塗工紙関連事業〕は、塗工紙分野の一部製品でライフサイクルの関係から需要減が続く中、機能紙分野の新製品が成長したことなどから、売上高136億8,500万円と前期比1億7,500万円(▲1.3%)の減収にとどまった。収益面では、営業利益が▲900万円とわずかに赤字となったものの、収益改善対策の効果などで前期に比べ1億2,500万円改善し、黒字体質に目処が立った。
 なお東日本大震災によりグループの一部子会社で短期的に生産・出荷が滞ったが、幸いにして人的被害や設備損壊といった直接的被害はなく、当期業績への影響は軽微だった。
  一方、震災影響によるサプライチェーンの寸断や電力事情の悪化など、次期の業績に悪影響を及ぼす懸念材料は山積している。同社グループは顧客動向の正確な把握に努めるなど、最も安全かつ効率的な生産活動を維持・確保することにより、震災影響をいち早く克服し日本経済の復興に貢献するとしている
<11年度の見通し>
 技術力を活かしたビジネス展開を推進するとともに、海外戦略の観点から特に成長著しい中国を中心に事業展開を加速させることを次期の施策に掲げている。業績予想については、東日本大震災の前までは仕入販売ビジネスの縮小に伴い減収となるものの、次期成長に向けた動きを加速するためのコストを含めても増益と利益率の向上を目指していた。これに震災の影響として現時点で想定し得る懸念材料を考慮に入れ、売上高は380億円(▲8.7%)、利益面については営業段階で18億円(▲30.3%)、経常段階で18億円(▲27.5%)、最終段階で11億円(▲36.2%)を見込んでいる。

【日本製紙グループ本社】
<10年度の概況>
 低水準の国内需要という厳しい経営環境に対応するため、固定費を中心としたコストダウンを強力に推進し収益の回復に努めてきた。だが3月に発生した東日本大震災によりグループ生産・販売拠点の多くが被災し、特に日本製紙/石巻・岩沼・勿来の3工場は甚大な被害を受けた。このため棚卸資産の評価損など116億円、固定資産の原状回復費用など452億円、その他操業休止期間中の固定費や工場の復旧対策費用などで総額627億円の震災損失を特損として計上した。
 この結果、売上高は前期比+0.4%の1兆998億円、営業利益が同▲17.5%の356億円、経常利益が▲15.8%の316億円、最終損益は▲242億円となった。
<部門別状況>
〔紙・パルプ事業〕売上高は▲0.1%の8,797億4,000万円、営業利益は▲35.2%の232億1,400万円。
 〈洋紙〉のうち「新聞用紙」の販売数量は広告出稿の低迷による頁数や発行部数の減少が継続し、前期を下回った。「一般洋紙」は広告用途の需要減少などから販売数量が低調に推移し、売上高は前期比マイナス。
 〈板紙〉では天候不順による青果物関係の需要減があったが、猛暑による飲料関係の需要増や冬物関連需要が堅調に推移し、段ボール原紙などの国内販売数量は前期を上回った。〈家庭紙〉は需要が堅調に推移し、販売数量で前期をオーバーした。
〔紙関連事業〕売上高は+3.6%の943億3,500万円、営業利益は+85.5%の80億4,400万円。〈液体用紙容器事業〉は猛暑による飲料需要の増加があったものの、牛乳市場の縮小が継続しており、販売数量はほぼ前年並みだった。〈化成品事業〉では、溶解パルプなどの販売が年間を通じ好調に推移した。
〔木材・建材・土木建設関連事業〕売上高は+8.5%の566億500万円、営業利益は+229.8%の19億2,200万円と好調だった。〈木材・建材事業〉では新設住宅着工数が低調に推移したものの、持ち直しの動きも見られ、住宅用材や木材製品などの販売が前期を上回った。だが〈土木建設事業〉は、工事量が低調に推移した。
〔その他〕売上高は▲3.5%の691億3,600万円、営業利益は+0.6%の24億2,600万円。〈清涼飲料事業〉では猛暑による需要増があったものの、成熟した市場下における販売競争の激化により減収となった。
<11年度の見通し>
 東日本大震災の影響により国内経済の今後の見通しは依然として不透明であり、企業の広告宣伝費の圧縮などにより紙の需要についても冷え込みが懸念される。同社グループでは、収益の最大化を図るために生産体制の検討を進めているが、次期の連結業績予想については、現時点で適切な予想が困難であることから未定としている。
 なお本誌前号で既報の通り石巻工場の復旧スケジュールが8月に自家発電設備、9月末に抄紙機と定められた。その後、年内に主要な抄紙機の復旧を完了させ、月産6万tの態勢に持っていく考え。石巻は震災前の時点で平均月産量が国内6万t、輸出2万t、合計8万tの体制だった。このうち現状でカバーできているのは4割程度、残りは内外のOEMなどで調達している。同社としては当面、国内の6万tについて復旧を優先する。また生産体制の検討については遅くとも9月末までに基本デザインを描き、その時点で11年度の業績予想も開示する見通しだ。

 以下、北越紀州製紙、三菱製紙、リンテック、レンゴーについては次号。

(Future 6月13日号)

4月の紙・板紙需給/震災影響で国内出荷は2ヵ月連続の減
 日本製紙連合会の集計による4月の紙・板紙国内出荷(速報)は前年同月比▲3.3%の224.7万tと、落ち幅こそ前月の▲5.5%より縮小したものの、震災の影響などにより2ヵ月連続で減少した。うち、紙は▲5.2%の123.4万tと3ヵ月連続の前年割れ。板紙は▲0.8%の95.4万tで概ね横バイも、6ヵ月ぶりのマイナスとなっている。主要品種では衛生用紙、包装用紙、白板紙を除き前年実績を下回った(表)。
 紙・板紙のメーカー輸出は、やはり震災の影響から前年同月比▲49.1%の5.8万tと大きく落ち込み、8ヵ月連続の前年割れ。紙を中心にオーストラリア、中国向けが減少している。
 紙・板紙の在庫は前月比▲8.6万tの177.8万t。うち紙は▲7.1万tの124.1万t、板紙は▲1.5万tの53.7万tとなっている。なお当月に計上された震災などによる在庫滅失は▲0.8万t、前月からの累計では▲1.5万tに上る。
 以下、主要品種の動向である。
<新聞用紙>国内出荷は前年同月比▲6.3%の25.3万t。落ち幅は前月の▲12.4%より縮小したものの、引き続き主力工場の被災や広告出稿の減少などが影響した。
<印刷・情報用紙>国内出荷は同7.1%の68.6万t。同じく主力工場の被災や震災以降の需要減が影響している。メーカー輸出は▲60.1%の3.9万tと大きく落ち込み、主力の塗工紙を中心に7ヵ月連続のマイナスとなった。中でも微塗工紙は0.1万tと、ほぼ壊滅状態。
<衛生用紙>国内出荷は同+2.3%の15.8万t。3月の+7.8%に比べれば伸び率は鈍化したが、引き続き震災関連需要などもあって堅調だった。
<板紙・包装用紙>段ボール原紙の国内出荷は同▲1.5%の75.9万t。月の後半から一部の需要は回復したものの、需要家による在庫積み増しの反動もあって6ヵ月ぶりに減少した。
 他方、白板紙は+3.8%の12.9万t、包装用紙は+0.0%の7.2万tと、ともに前月の減少から増加に転じている。

(Future 6月13日号)

北越紀州製紙/中国広東省に年産60万tの白板紙工場を建設
 北越紀州製紙が中国で白板紙の製造・販売事業に進出する。
 同社は5月18日開催の取締役会で、香港の紙商社Hop Cheong Paper Company Limited(=HC社)および三菱商事との間における合弁契約の締結を決議し、子会社の設立を決めた。この合弁持株会社の100%出資による製造販売子会社が、広東省で白板紙の製販事業に乗り出すというスキームである。2013年11月に第1期計画として年産30万tの白板紙マシンを稼働させ、最終的には60万tの態勢とする。
 合弁持株会社のXing Hui Investment Holdings Co. Limited(星輝投資控股有限公司)は香港で設立し、資本金は5,000万米j。出資比率は北越紀州60%、HC社30%、三菱商事10%で、日本側がマジョリティを確保。この持株会社の100%出資で設立される製造販売子会社(北越紀州から見ると孫会社)の江門星輝造紙有限公司は資本金が同じく5,000万米jで、工場所在地の広東省江門に置かれる。約300名規模の従業員数を予定しており、主としてコート白ボールを製販する。
 北越紀州製紙の白板紙事業は、その主要銘柄の一つであるコート白ボールの『マリコート』が今年で上市50周年を迎える。この間、同社を支える中核事業として発展してきており、今後もその重要性は揺るがない。また今年4月にスタートしたグループの長期ビジョン「Vision 2020」と中期経営計画「G−1st」では、グループが真のグローバル企業に成長することを主要な目標として掲げている。
 この目標達成の一施策として、今後も安定した成長が見込める中国の白板紙市場に向け、半世紀にわたり日本で培ってきた操業技術を活かし、高品質・高効率・低環境負荷のコート白ボールを提供することで、新たな収益基盤を確立する。それは同時に、内需減少という経営環境のもとでグローバル化を進める同社にとって、極めて重要かつ戦略的な事業と位置づけられる。
 中国側のパートナーとなるHC社は、北越紀州が長年にわたり『マリコート』を輸出販売してきた優良顧客であり、今日まで良好な関係を築いている。また三菱商事は同社の筆頭株主であり、仕入・販売の両面で緊密な関係にある。
 中国の白板紙市場は年間約900万tで、うち300万tが広東省に集中している。いわば白板紙のメッカであり競争も激しいが、それだけにここで評価を確立すれば短期間のうちに全国ブランドに名を連ねることができる。製品は広東省内を中心に中国国内で販売する計画だ。工場の建設予定地は同省江門の工業団地で、ここにはパートナーであるHC社の子会社がすでに進出、ライナーを製造している。
 ちなみに合弁会社と製造販売子会社の社名にある「星輝」は、北越紀州製紙の社章(☆の中にBoardとBrightの頭文字であるBをあしらったもの)のイメージに由来している。HC社、三菱商事というライトスタッフを得た同社が中国の白板紙市場でどのような存在感を発揮していくのか、注目される。
 日本の製紙メーカーが主体となって中国に新工場を建設し抄紙機を設置するという事業は、王子製紙・南通に次ぐもの。北越紀州としては洋紙分野へ進出するにはややタイミングを逸した観があり、またパルプからの一貫生産態勢となれば、王子・南通がそうであるように投資コストも嵩んで体力的に厳しい。その点、古紙原料主体の白板紙であれば抄紙機本体中心の投資で済む。この手法は白板紙に限らず、購入パルプ主体の特殊紙分野などにも応用が可能なはずで、その意味でも今後の試金石となるかもしれない。
 なお同社は前記したVision 2020の中で10年後の売上高を3,000億円以上と想定、うち海外の比率を25%(750億円以上)まで高めるとしている。現状の200億円からすると高いハードルだが、中国事業の60万t態勢が軌道に乗れば自ずと射程圏に入ってくるはずだ。

(Future誌6月6日号)

王子特殊紙/軽量で裏抜けが少ない理想の嵩高薄葉紙を発売
 王子特殊紙はこのほど、『ビューコロナ』のシャープな印刷上がりを受け継ぎながら、柔らかな紙腰を実現した超軽量嵩高薄葉紙『ビューコロナSモアバルキー』と『ビューコロナSクリームバルキー』を新発売する。
 新製品の特徴は、軽さと柔らかな紙腰、従来品同様の優れた印刷適性と高い不透明度、地合のよさと表裏差の少なさ。「軽量ながら裏抜けが少ないので、携帯性が求められる辞典用紙や法律書などの本文用紙に最適」(王子特殊紙)。生産は東海工場岩渕製造所。 初年度販売2,000tを目指す。

(Future誌6月6日号)

紙パの2011年3月期決算/後半に減速感広がり震災でさらに不透明に
 紙パ企業の2011年3月期決算(10年4月〜11年3月)の発表が始まった。
 11年度は、前半はエコカー減税やエコポイントといった景気刺激策に加え、輸出の増加もあって回復ムードが漂った。しかし後半は、円高の長期化や経済対策の縮小、原燃料高が重なり、減速感が広がった。市況の軟化もあって不透明感を拭えずにいたところに起こったのが、年度末の東日本大震災。震災による経済損失の全貌はまだ見えないが、生産設備の損壊など、紙パ企業で直接的な損失が大きかったのは、日本製紙グループと三菱製紙。一方、全事業が好調で過去最高業績を記録したリンテックは、震災被害も軽微だった。
 品種別で見ると、段ボールなどの産業用途が堅調だったのに対し、洋紙は好材料に乏しく需要縮小が既定路線になっている。
 次期見通しについては各社とも、震災の影響が不透明なため予測は非常に難しい、とした上で公表している。

(詳細はFuture誌5月30日号)

日本製紙グループ/岩沼と勿来が完全復旧
 日本製紙では、東日本大震災で被災した岩沼工場と勿来工場が、完全復旧して全生産設備の操業を再開した。
○岩沼工場(宮城県岩沼市)…4月11日に3号抄紙機、23日に4号抄紙機を稼働、続いて5月7日に2号抄紙機、11日に1号抄紙機を稼働し、すべての生産設備の操業を再開した。
○勿来工場(福島県いわき市)…4月5日から順次操業を再開したが、強い余震が頻発したため再び全停止を余儀なくされていた。その後、復旧作業を進め、4月30日に5号塗工機が稼働、残る3台の塗工機についても5月10日までに順次操業を再開した。

東電・東北電に電力供給
 日本製紙グループはこのほど、夏場の電力不足懸念に対し、先に発表したサマータイム導入のほか、次のような取組みを発表した。
(1) 購入電力の25%削減
 日本製紙と日本大昭和板紙の主力工場で、自家発電設備をフル稼働して購入電力を減らし、グループ全体で昨年比25%のピーク電力削減を実現する。
(2) 電力供給の検討
 東京電力と東北電力から電力供給の要請を受けたことから、両電力会社への送電を検討している。自家発電設備をフル稼働した際の余剰電力に加え、休止中の発電設備を再稼動して供給する予定で、開始時期や期間、供給量などの詳細は、今後、両電力会社と詰めていく。なお電力供給を検討する工場は東京電力管内では日本大昭和板紙の草加(埼玉県草加市)と吉永(静岡県富士市)の2工場、東北電力管内は日本製紙の岩沼と勿来、日本大昭和板紙・秋田(秋田県秋田市)の3工場。全体で8〜10万kWの電力供給を検討している。また、日本製紙・石巻工場も復旧後に電力供給が可能であり、必要に応じて対応していくとしている。

(Future誌5月30日号)

レンゴー/ハワイで段ボール販売事業を新規展開
 レンゴーは、ハワイで段ボールケースなどの包装資材販売を展開する「Hawaii Box & Packaging, Inc.」(=HBP社)の全事業を譲り受けた。レンゴーが100%出資して設立した新会社「Rengo Packaging, Inc.」が同事業を引き継ぎ、6月1日から業務を開始する。
 HBP社は、2008年にハワイで唯一の段ボール工場が閉鎖された際に、その工場の得意先から段ボール製品の供給を続けるよう求められた同工場の関係者によって設立された。今回の事業譲り受けは、HBP社の現株主がレンゴーに事業譲渡を申し入れ、レンゴーがその要請を受けたもの。
<Rengo Packaging, Inc.>
 〔本社所在地〕99-1230 Waiua Place, Aiea, HI 96701, U.S.A.
 〔社長〕Robert Cundiff
 〔レンゴーからの派遣〕常勤副社長を派遣する予定
 〔設 立〕4月14日
 〔資本金〕600万ドル
<Hawaii Box & Packaging, Inc.>
 〔本社所在地〕Rengo Packagingに同じ
 〔社 長〕Robert Cundiff
 〔資本金〕125万ドル
 〔株 主〕個人株主5名
 〔事業内容〕米国本土から仕入れた段ボールケースおよび包装資材関連製品の販売
 〔売上高〕約1,000万ドル2010年12月期)
 〔拠 点〕オアフ島、ハワイ島、マウイ島
 〔従業員〕11名

(Future誌5月30日号)

大王製紙/中国の生理用品合弁会社で出資比率を引き下げ
 大王製紙はこのほど、05年に中国で設立した生理用ナプキンの合弁会社について、出資比率を引き下げると発表した。
 大王製紙は05年4月、中国での生理用ナプキンの事業化に向けて、金光紙業投資有限公司と合弁で「金王衛生用品有限公司」を設立、06年から操業を開始した。大王製紙の出資比率は40%で、これまではその比率に応じ、金光紙業投資が会社運営全般と営業部門を、大王製紙が工場運営と商品開発を担当していた。しかし今後は、金光紙業投資が主導権を持って合弁会社の収益改善に当たり、大王製紙は出資比率を14.9%に引き下げる。
 これに伴い大王製紙は、12年3月期第1四半期で約22億円の特別損失を計上する(後出の次期業績予想に織込み済)。

(Future誌5月30日号)

製紙連/第40回定時総会で「大震災への対応が重点」と篠田会長
 日本製紙連合会は5月10日、東京・中央区の紙パルプ会館で第40回定時総会を開催。役員改選の期ではないが、2010年度の事業報告や11年度の収支予算など4項目の議案について、いずれも原案通り可決承認した。
 総会には経済産業省の川上景一大臣官房審議官(製造産業局担当)、紙業生活文化用品課の坂本敏幸課長、林野庁の皆川芳嗣長官らが来賓に招かれた。このうち川上氏は、東日本大震災で被災した石巻市を自ら視察したことを紹介しつつ、経産省として復興支援の前面に立つ決意を披瀝。また皆川氏は今年が国際森林年であることを踏まえ、林業と紙パの関係を深めていきたいと挨拶した。
 総会自体は30分ほどで終了したが、良い意味で緊張感のある雰囲気のもと、大震災後の困難な状況に業界が結束して立ち向かうことを、改めて確認し合う場となった。以下、篠田和久会長の挨拶要旨を紹介するが、やはり大震災に関する言及が多い。
 「3月11日に発生した東日本大震災は、東北太平洋岸を中心に未曾有の被害をもたらした。製紙連の会員企業においても多数の工場が被災し、未だ復旧の目途が立たない工場もある。さらに残念ながら従業員の死亡も確認されており、改めて哀悼の意を表したい。
 大震災の発生に伴い、製紙連としては会員企業の被災状況把握や関係省庁との連絡に努めるとともに、会員の主要工場が被災し、特に新聞、印刷・情報用紙の供給不安が懸念されたことから、新聞用紙委員会に非常事態対策本部を設置したほか、私からもすべての要望には応じかねる場合もある旨、需要家をはじめ関係者に対しメッセ−ジを発出した。
 さらに薬品をはじめとする資材の不足、原発事故、計画停電、余震など生産活動を制約する事象も次々と顕在化したが、会員各社の工夫・努力や流通・需要家の理解もあり、今までのところ紙の需給状況は概ね混乱もなく推移してきていると認識している。
 いずれにしても、被災した全工場の一日も早い完全復旧が望まれる。今回の大震災は、回復の兆しが見え始めていた日本経済に打撃を与えただけでなく、資材や部品の供給先の絞り込みによる副作用をまざまざと認識させてくれた。また今年の夏場は東京電力と東北電力管内で電力消費のピーク時カットが求められるなど、今回の大震災から日本経済が復興していくためには克服すべき課題が多々あるが、復興需要もあることから秋以降、遅くとも年末までには回復軌道に乗ることを期待している。
 製紙業界においてもリーマンショック後、急激に後退した紙・板紙需要の回復が十分でなかったところに、今回の震災はさらに追い打ちをかける形となった。しかし、さまざまなインフラが使用できなくなる中で、紙は確かな情報の伝達、物資の運搬、衛生面の維持といった、本来的に持つ機能を改めて発揮したのではないかと感じている。
 製紙各社は、国民生活に欠かすことのできない資材である紙を安定的かつ合理的な価格で供給することに、今後とも精一杯努力していきたい。
 今年度の事業計画でも「東日本大震災への対応」を重点課題の第一に掲げている。被災した企業が取り組む復旧への努力が早期に実現するよう、側面からサポートするとともに電力消費の抑制など業界全体に影響を及ぼしかねない諸課題には、会員企業の意見を反映すべく、その取りまとめなどを行っていきたい」

(Future誌5月30日号)

日本製紙グループ本社/電力不足対応のためサマータイムを導入
 日本製紙グループ本社は、今夏の電力不足懸念に対し、電力消費量の削減に協力するため、サマータイムなどの節電対策を実施する。
 〔実施期間〕5月9日〜9月30日
 〔対象企業〕日本製紙グループ本社および主要グループ会社の本社(所在地:東京都千代田区一ツ橋1−2−2。ただし日本製紙は研究開発本部、全国営業支社を含む)
 〔具体的な取組み〕
@サマータイム…各社の所定始業時刻にもよるが、就業時間を1時間早め、電力ピーク時間帯の電力消費量を削減する。例えば、日本製紙グループ本社および日本製紙の場合、x変更後の就業時間は8時15分〜16時15分(昼休み12時〜13時)。
A全館一斉消灯…従来の昼休みの消灯に加え、対象事業所館内は18時に一斉消灯する。これにより電力消費のピークカットを図るとともに、全社員の業務効率化への意識を向上させ、残業時間の削減、さらにワークライフバランスの推進につなげる。
B空調設定温度のアップ…夏季期間中の館内空調設定温度を1度アップさせ28℃に変更する。併せて、従来6月から実施している「クールビズ」(服装の軽装化)の開始時期を早め、5月9日から実施する。
 また同社では現在、夏場の電力不足対応のため、さらに踏み込んだ行動計画の策定を進めており、まとまり次第公表するとしている。

(Future誌5月23日号)

レンゴー/境港魚凾を子会社化
 レンゴーはこのほど、関連会社である境港魚凾の株式を追加取得、出資比率を41.8%から76.3%に引き上げて子会社化した。
 境港魚凾は、鳥取県境港市を中心に段ボールケースの製造販売、水産用容器の販売を行うボックスメーカーで、業績も安定して推移している。レンゴーは今後、近隣の直営工場、グループ企業との連携を強化しながら、山陰地区での段ボール事業の拡充を図る考え。
<境港魚凾の概要>
 〔本社所在地〕鳥取県境港市昭和町12−5
 〔代表者〕川本孝一郎社長
 〔資本金〕4,900万円
 〔主要株主〕レンゴー76.3%、北陽冷蔵11.2%、境港魚市場10.2%
 〔事業内容〕段ボールケースの製造販売、水産用容器の仕入販売
 〔売上高〕14億円(2011年3月期)
 〔従業員数〕46名

(Future誌5月23日号)

テトラパック/10年売上高は5.2%増で炭素排出削減目標も達成
 テトラパックはこのほど、2010年の売上高が前年比+5.2%の99億8,000万ユーロになったと発表した。主要事業の充填包装ソリューションが、東南アジアや東欧、中央アジア、中国、南米など世界各地で2桁成長を達成し、前年比+5.9%(90億1,000万ユーロ)の純売上高を記録したことが要因。
 また同社では2010年、炭素排出量削減目標(絶対値)も達成、目標値である「2005年比10%削減」を上回る11%の削減に成功した。同社によれば、「その間、売上高は23.1%増えているため、相対的な削減幅は30%に達する」。
 さらに紙容器用原紙の持続可能な調達や、飲用済み紙容器のリサイクル率上昇などについても数値目標を達成した。2010年にテトラパックが調達した原紙のうち、40%はFSC認証を取得しており、85億個のカートンにFSCのロゴをつけて販売している。リサイクルについては、世界全体で約300億個の紙容器をリサイクルし、47万3,000tの廃棄物削減に成功した。

(Future誌5月23日号)

原材料需給/輸出が好調なパルプ、パルプ材は東北地区で低調−3月
 東日本大震災による紙・板紙の減産を受け、3月の原材料需給は総じて低調だった。
<パルプ>製紙パルプの3月生産は、主用途である紙の生産が東日本大震災の影響を受け前年同月比▲9.3%の132万tにとどまったため、同▲6.3%の78.7万tと落ち込み16ヵ月ぶりの前年割れだった。主力のBKPで見ると、輸出は依然好調で6割増となったが、印刷・情報用紙生産の▲11.2%が大きく響き、▲7.5%の63万tと同じく16ヵ月ぶりの前年割れとなった。
 一方、UKPは主用途である重袋用クラフト紙の生産が+5%と伸長したほか、段ボール原紙も+2.1%と増産基調だったため、+2.5%の9.8万tとなった。機械パルプは▲4.1%の5.8万tで、3ヵ月ぶりの前年割れ。
 製紙パルプの販売はBKPが引続き好調で、円高基調にもかかわらず輸出は6割増となり、国内販売の前年割れをカバーし+11.2%の8万tを記録、製紙パルプ合計でも+6.3%の10.2万tとなっている。前年同月比プラスはBKPで18ヵ月連続、製紙パルプ合計で17ヵ月連続を記録しているが、UKPは19ヵ月ぶりのマイナスとなった。
<パルプ材>パルプの生産が震災の影響を受け前同月年比マイナスとなったため、パルプ材の消費量も同▲7.2%の140.8万tと16ヵ月ぶりにマイナスへ転じた(一部未把握)。ただし東北地区の工場を除けば、同3%程度のプラスと前月並みだった。
 集荷量は、合計で前年同月比▲10.7%と8ヵ月ぶりにマイナス。ただし、こちらも東北地区の工場を除けば同1.0%程度のプラスになることから、震災の影響によるところが大きいと考えられる。数量は前月比で14.5万t減少し、130.7万tとなった。
 在庫量は前年同月比▲13.1%の150.9万tと18ヵ月連続のマイナス、前月比では▲10.4万tとなった。ただし、震災による消失分は加味されていない。維持月数は1.1ヵ月で前月と同じ。

(Future誌5月16日号)

大王製紙/政策投資銀行と共同でサイゴンペーパー社の株式を取得
 大王製紙は、高い経済成長が続くベトナムで家庭紙・板紙事業に参入する。ASEAN地域での事業拡大を推進するため、ベトナムの製紙会社サイゴンペーパー社に出資するもの。同社は、ベトナムで家庭紙と板紙の製造・販売を行う大手メーカーで、既存工場の隣接地に建設中の新工場が本年夏に稼働する予定となっている。
 大王製紙は今回、新工場の建設資金調達を目的としたサイゴンペーパー社の第三者割当て増資を日本政策投資銀行と共同で引き受けた。出資額は公表していない。
 また一部の既存株主からサイゴンペーパー社の株式譲渡を受ける予定で、最終的な持株比率は大王製紙33.8%、日本政策投資銀行14.5%、2 社合計で48. 3%となる見込み。
<サイゴンペーパー社の概要>(2010 年12月末時点)
*会社名(英語名)…Saigon Paper Corporation (民間企業)
*本社所在地…ホーチミン市
*工場所在地…バリア・ブンタウ省 ミーシャン工業団地(ホーチミン市中心部の南東約65q)
*代表者…Mr. Cao Tien Vi
*設立年…1997年
*事業内容…家庭紙・板紙の製造販売、古紙の回収販売
*資本金…2,043億ベトナムドン(約8億8,000万円)
*売上高…7,258億ベトナムドン(約31億円)
*従業員数…1,857名
*年産能力…7万1,200t(内訳:家庭紙1万8,200t、板紙5万3,000t)
<新工場の概要>
〔抄紙機〕▽家庭紙用1台…年産能力2万8,000t、2011年7月稼動予定 ▽板紙用2台…年産能力17万1,600t(合計)、11年6月、8月稼働予定
〔古紙処理設備・原質設備一式〕
 抄紙機3台の合計年産能力は19万9,600tで、既存工場と合わせた年産は27万800tに上る。新工場の設備は今年6月以降に順次稼動し、15年度には150億円の売上高を見込む。

(Future誌5月16日号)

日本製紙/岩沼の新聞マシン2台が操業を再開
 日本製紙は、東日本大震災で被災した石巻工場、岩沼工場、勿来工場の復旧状況について、次の通り発表した(4月21日付)。
○石巻工場(宮城県石巻市)…津波で流入した土砂や瓦礫の撤去作業を、他工場からの人的応援も得て順次進めている。作業が進展したら設備の被害状況を精査し、操業再開までの具体的な計画を策定する予定。
○岩沼工場(宮城県岩沼市)…4月11日に新聞用紙マシン1台の操業を再開した。4月24日には2台目の新聞用紙生産設備を稼働する。残る2台についても5月中に稼働し、完全復旧する見込み。
○勿来工場(福島県いわき市)…4月5日に塗工機1台の稼働を再開し、続いて2台の塗工機を立ち上げた。しかし、4月11〜12日に連続して発生した強い余震で建屋が損傷を受けたため、全設備の操業を一時停止した。余震の状況にもよるが、現段階では4月末から順次再稼働できる見込み。

(Future誌5月16日号)

三菱製紙/八戸工場のパワープラント早期立ち上で東北電力に5万kW供給へ
 三菱製紙は、地震と津波の影響により操業を停止した八戸工場(青森県八戸市)、北上事業本部(北上ハイテクペーパー:岩手県北上市)、白河事業所(福島県西白河郡西郷村)の4月25日時点における復旧見通し、また夏場の電力不足に備える自家発電力の供給態勢について次の通り発表した。
<八戸工場>(生産品目:塗工・非塗工印刷用紙、情報用紙、白板紙)…引き続き操業は停止中。パワープラント(自家発電設備)については予定通り、4月下旬から順次立ち上げを行う。現在は2台の重油ボイラー、3台のタービンの試運転中。中部電力の支援もあり、5月下旬には全パワープラントの立ち上げを予定している。
 また同社は東日本の電力不足解消に寄与するため、パワープラントを早期に立ち上げて一部の電力を東北電力に供給すべく、関係省庁および青森県の協力を仰ぎ、東北電力と協議した結果、夏の需要期に向けて5月以降5万kWの電力を供給することで大筋合意した。
 抄紙機、塗抹機については5月25日から一部が操業を再開する予定であり、その後も順次稼働させ、11年度上期中には一部の銘柄を除き工場主力製品の生産体制が整う。ただしフル生産が可能となるのは11年度下期中の見込み。
<北上事業本部>(生産品目:写真用印画紙原紙、衛生用紙、パルプ)…・4月3日に復旧したが、7日の宮城県沖を震源とする余震の影響により、全マシンが再度停止。14日には操業を再開したものの、一部原材料の安定調達が困難な状況であり、フル操業にはまだ時間を要する。
<白河事業所>(生産品目:プレスボード〈電気絶縁紙〉)…3月24日に全面復旧し、操業を再開。現在はフル操業中。
 なお今回の大震災による被害状況については現在、算定の作業を進めており、「業績予想の修正が必要になった場合は速やかに開示する」としている。

(Future誌5月16日号)

丸三製紙/仙台臨時事務所に本社機能を移管
 福島県南相馬市に本社を置くレンゴーグループの丸三製紙は、福島第一原発の事故を受けて仙台臨時事務所を開設した。当面の間、本社機構を同事務所に移転する。
【当面の連絡先】
○仙台臨時事務所
 〔所在地〕〒984-0015宮城県仙台市若林区卸町3-8-103 アーバンネット卸町ビルN館2階
 〔電話・FAX〕電050-7788-6261/6262/6263 F050-7788-6260
○東京営業所
 〔所在地〕〒108-0075 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー15F
 〔電話・FAX〕電03-6716-8686(板紙営業部) F03-6716-8680(特殊紙営業部) F03-6716-8684

(Future誌5月16日号)


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