NEDO、京都大学、京都産技研/CNF京都プロセスの実証プラントが稼働
京都大学生存圏研究所とナノセルロー スフォーラムは3 月22 日、京都テルサ
(京都市南区)で“構造用セルロースナノファイバー材料の社会実装に向けて”をテーマに「Nanocellulose Symposi
um 2016 /第310 回 生存圏シンポジウム」(写真)を開催したが、翌23 日には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および京都大学、京都市産業技術研究所により、京都大学の宇治キャンパス内に設置した“京都プロセス”によるテストプラント(写真)の「お披露目式」が催された。
京都プロセスとは変性リグノセルロースナファイバー・樹脂複合材料の一貫製造プロセスのことで、木材や竹などの原料から樹脂複合材料まで一気通貫で製造するもの。当日はテストプラント稼働後初のプレス発表となった。
“京都プロセス”を中心に産官学の各種研究成果が報告
最近、将来へ向けての有望な新素材としてセルロースナノファイバー(CNF)が一般にも注目されているが、それは資源小国のわが国が豊富に保有する資源である森林を有効活用できる点が大きな理由の1 つになっている。また軽量・高強度・低熱膨張という特性をもち、自動車や電子機器などの部品から化粧品・日用品に至る幅広い用途分野で利用できるというポテンシャルが期待され、産官学の各種研究機関により実用化へ向けての研究開発が積極的に取り組まれているという背景もある。
このCNF の市場性に関し経済産業省では2030 年に1 兆円規模となると見込んでおり、新たな市場創造・新産業創出に向け同省や農水省、環境省などの5 省庁が連携し産官学連携の各種プロジェクトが進行している.一方、今年1 月にNHK のテレビ番組・クローズアップ現代でCNF に焦点をあてた「“未来の紙”が世界を変える!?~日本発・新素材の可能性~」が放送されるなど、多くのマスコミで取り上げられていることと相まって一般の関心も一段と高まってきている。そうしたなかで開催された「Nanocellulose Symposium 2016 /第310 回 生存圏シンポジウム」は、産業化へ向けての具体的成果を発表する場として500 名を超える参加者が集まることとなった.
当日のシンポジウムでは、経済産業省紙業服飾品課長の渡邉政嘉氏による日本のナノセルロース戦略に関する特別講演のほか、CNF 材料の社会実装に向けた取組みの最新動向が紹介され、京都大学を集中研とするNEDO 事業では世界に先駆けて開発した“京都プロセス”の発表が行われた。さらに、近畿経済産業局「部素材産業- CNF 研究会」との連携によるCNF 原料観察や試作結果が報告され、関連40 機関による展示会も催された。また、京都大学生存圏研究所と京都市産業技術研究所は、CNF でもっとも市場効果が大きいとされる構造材料としての利用に関し研究を進めてきたが、その成果をまとめた『京都プロセスへの道』(B5 判・137 頁)が参加者全員に進呈され、直近のCNF 関連サンプル提供企業一覧も配布された.
“京都プロセス”を中心に産官学の各種の研究成果が報告
シンポジウム翌日に催された“京都プロセス”テストプラントの「お披露目式」には経産省、環境省、林野庁、京都大学、NEDO などから事業関係者36 名が出席、見学会に先立って京都大学生存圏研究所・渡辺隆司副所長、NEDO 電子・材料・テクノロジー部・山崎知巳部長が主催者挨拶を、経産省から近畿経済産業局の関総一郎局長、製造産業局紙業服飾品課の渡邉政嘉課長が来賓挨拶をそれぞれ行った。
渡邉課長は来賓挨拶で、「“日本再興戦略”にCNF の研究開発推進が明記されて以来、政府は一丸となって取り組み、今日に至っている.まさに農工商連携であり、林野庁と経産省が一緒に組んでできる非常に珍しいケースである」としたうえで、環境省地球環境局地球温暖化対策課の松澤裕課長、林野庁森林整備部研究指導課の宮澤俊輔課長が出席したことに触れ、「経産省によるナショナルプロジェクトのオープニングに他省の課長まで出席するのは初めてではないか」と、同テストプラントに寄せる期待の大きさと責務の重さを語った。続いてNEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部の森田保弘主査と、“京都プロセス”の開発を主導した京都大学の矢野教授による研究開発成果の説明が行われ、その後、テストプラント見学会が行われた。
(詳細は紙パルプ技術タイムス5月号)