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経済産業省/インドネシアとフィリピンで古紙回収システム研修会を実施


経済産業省では同省の技術協力事業のうち、アジア地区の古紙リサイクル改善に向けた取組みを支援するため、2009年度から日本製紙連合会などと協力し、日本の古紙回収システムに関する日本での受入れ研修を実施してきた。
2015年度からは新たにインドネシアとフィリピンに対し、両国における古紙回収の向上に寄与するため、日本の古紙回収に関する知見の提供を3年間を目安に行っていくことを計画している。ただし、これまでは日本で約10日間の受入れ研修を行ってきたが、本年度はまず当該国の状況を把握し、より両国の実情に合った提言を行うべく、初めての試みとして現地にて調査・指導およびセミナーを実施した。
派遣期間と場所はインドネシアが11月17~22日にジャカルタ、フィリピンが11月23~26日にマニラ。派遣メンバーは古紙再生促進センター、日本再生資源事業協同組合連合会、全国製紙原料商工組合連合会、製紙連から各1名の計4名。
カリキュラムは両国共通で以下の通り。
 (1) 日本の古紙回収システムに関するセミナー
日本の古紙リサイクルへの取組みと法的制度/古紙回収事業の歴史と現状/古紙直納問屋の歴史と現状/古紙再生促進センターの役割、古紙標準品質規格
参加者はメーカー、問屋、回収センター、政府関係者(フィリピンのみ)の30~40名。
 (2) 実地調査・指導
製紙工場、古紙問屋、資源回収センター(2日間)
RISIアニュアルレビューの2015年版から、両国の製紙および古紙リサイクルの現状を抽出すると次のようになる(数値はいずれも2014年データ)。
 〔インドネシア〕
紙・板紙生産量1,094.3万t(うち板紙484.6万t)
紙・板紙消費量744.3万t(輸出412.4万t、輸入62.4万t)
古紙回収量431.8万t
古紙輸出量1.8万t
古紙輸入228.0万t(シンガポール、オーストラリア、英国、米国、イタリアなどから調達。日本からの輸入は9.5万t)
古紙消費量658.0万t
古紙の自給率65.6%、回収率58.0%、利用率57.9%
インドネシアの場合、産業系古紙やデパートなど大規模発生源からの古紙回収は概ね実施されている。一方で家庭からの排出では、行政による資源ゴミの分別回収が行われておらず、個人の回収業者による訪問回収が細々と存在するのみで、大半は一般のゴミとして廃棄されている。
 〔フィリピン〕
紙・板紙生産量92.4万t(うち板紙57.7万t)
紙・板紙消費量183.4万t(輸出3.0万t、輸入94.0万t)
古紙回収量82.1万t
古紙輸出量6.0万t
古紙輸入量5.9万t(古紙は国内回収でほぼ自給されている。これはフィリピンの紙・板紙生産量が90万t強と極めて少なく、需要の約半分を輸入に頼っているためだ)。
古紙の自給率100.0%、回収率44.8%、利用率80.4%。
同国の場合も、産業系古紙や大規模発生源からの回収ルートはほぼ確立されている。家庭からの排出については、同じく行政による資源ゴミの分別回収は行われていないが、個人回収業者による訪問回収が普及している。また一般ゴミとして廃棄された紙は途中の過程で選別されたり、最終の埋立て処分場でも最貧困層により資源物として回収活動が行われている(ただし古紙の品質としては劣悪)。
以上の状況はあくまでメトロ・マニラ圈(人口約1億人のうち10%強)に限ったもので、製紙工場の大半がマニラ圏に集中する中にあって地方や特に島嶼部での古紙回収は、消費地までの物流コストが古紙リサイクル上の大きな障害となっている模様。
 〔現地での反応〕
今回の派遣に際して、受入れ側はインドネシア製紙連合会およびフィリピン製紙連合会が中心となって対応し、日本の取組みについて各関係者から賛同を得た。セミナーを通じた参加者の意見としては、古紙問屋業界のJ-BRAND制度、古紙リサイクルアドバイザー制度といった古紙品質向上に向けた取組み、製紙業界と古紙業界の緊密な連携、国民の間にリサイクルの意識がしっかり根づいていること、それを可能にするリサイクル教育や行政の果たす役割の重要性などについて関心が示されたという。
 〔今後の取組み〕
(1) 古紙ガイドライン策定に向けた現地ワーキンググループ(WG)の立ち上げ(メンバー;製紙メーカー、古紙問屋、政府関係者)
両国とも環境問題や資源回収に対する意識はあるものの、業界レベルでは古紙の定義、品種分類、品質規格などが整理されておらず、また回収率などの統計数字もオーソライズされたものは存在しない状態。そうした中、WGの立ち上げについて合意できたので、今後はこのWGを通じて両国の実情に合った古紙ガイドラインの策定を目指し、さらには古紙回収率向上に向け業界として行政関係者も交えて検討していくこととした。
(2) 2016年度
日本での古紙研修会を計画し、品質規格の策定方法や自治体を含めた回収のより詳細な情報提供を行っていく考えだ。

(Future 2016年1月18日号)

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