紙パルプ技術協会/第70回定時総会で王子HDの小関取締役が理事長再任
紙パルプ技術協会は7月7日、東京・銀座の紙パルプ会館で「第70回定時総会」を開催、議案の審議・承認を行うとともに役員改選,藤原・大川・佐伯の三賞表彰式および懇親会を行った。
当日の総会では小関良樹理事長(王子ホールディングス取締役常務グループ経営委員)が議長となり議事を進行、平成28年度事業の報告が行われ、同収支決算・貸借対照表・財産目録の議案について満場一致で承認。次いで同協会理事および監事の任期満了にともなう役員改選が行われ、小関理事長および山崎和文(日本製紙代表取締役副社長)、地蔵繁樹(中越パルプ工業取締役生産本部長)の両副理事長がそれぞれ再任されるとともに、専務理事は引き続き宮西孝則氏が務めることとなった。
新規事業では内外企業との差別化を
総会開会にあたって行われた小関理事長挨拶の大要は以下の通り。
「最近の日本経済は雇用問題の改善が続くなか、個人消費の持ち直しや企業収益の改善から穏やかな回復基調が続いている。一方で、米国トランプ政権の通商政策による影響や英国のEU離脱問題をはじめとする欧州情勢の先行き不透明感など、今後の海外経済の動きに注意する必要がある。
われわれの紙パルプ産業に目を向けると、紙・板紙の2016年国内需要は0.6%減と6年連続のマイナスとなった。板紙は食品用途や通販・宅配向けの需要の伸びに支えられ増加傾向で推移しているが、印刷用紙は出版物・新聞発行部数の減少や、紙から電子媒体へのシフト等で国内需要の低下に歯止めがかかっていない。こうしたなかで紙パルプ各社は比較的好調なパッケージ分野や家庭紙分野の拡大、東南アジア市場への事業展開、さらには紙パルプ事業で培われてきた技術を活かした電気事業への参入、そしてセルロースナノファイバーをはじめとする新素材の研究開発や事業化に向けた取組みを強化してきた。これらの世界で成功するには、あらゆる分野の国内外企業との競争に打ち勝つ必要があり、品質やコスト面で他と差別化できるための技術力を身につけることが課題と言える。
このように新素材の研究開発が活発に続くなか、大変喜ばしいことが2つあった。1つはセルロースナノファイバーの実用化に貢献された東京大学の磯貝明教授が藤原科学財団の第58回藤原賞を受賞されたこと。また、昨年の83回紙パルプ研究発表会でナノセルロースに関する発表を行った国立研究開発法人森林総合研究所の藤澤秀次、王子ホールディングスの酒井紅の両氏が木材・製紙産業の国際業界団体である国際森林製紙協議会(ICFPA)の第1回“Blue Sky Young Researchers and Innovation Award”を受賞された。この賞は、ICFPAが紙パルプ・森林分野において優れた研究開発に取り組む若手研究者を表彰する制度である。世界中の研究者のなかから受賞者はたった3名であり、うち2名が紙パルプ研究発表会から受賞したことになる。
さて、当協会はこの1年精力的に活動してきた。昨年10月の年次大会では大王製紙協力の下、香川県高松市で開催。また紙パルプ研究発表会や、製紙・パルプ・省エネ・計装の各セミナーでは、製紙業界だけでなくメーカーや大学・研究機関にも参加いただき、新しい技術や設備、それらを活用した操業経験などの報告があった。これらの場に参加し活発な議論を交わすことで、知識を増やすだけでなく親睦を深めることができたと確信している。そして当協会は今年が創立70周年にあたることから、年次大会では70周年記念大会として『革新と躍進〜未来に繋ぐイノベーション技術を目指して』をテーマに、さいたま市大宮ソニックシティで開催する。
特別講演では、中小企業の技術力を結集した人工衛星『まいどー号』を打ち上げた、宇宙開発共同組合SOHLA(ソーラ)の杦本日出夫(すぎもと・ひでお)理事長と、元プロ野球選手でスポーツキャスターの青島健太氏に講演いただく予定である。ほかにも、時代変化に合わせ新たにセルロースナノファイバーとIoTの両セッションを設けることになった。また、例年この定時総会で三賞と佐々木賞の表彰式を行ってきたが、今年の佐々木賞は紙パルプ技術協会賞とともに年次大会で表彰する。記念大会としてさまざまな工夫を凝らし、興味をもっていただけるよう検討しているところである。現時点で講演数は昨年を上まわっており、展示会へも多数出展していただける予定である。大宮は交通の要衝であり、都心からはもちろん東北・北陸からのアクセスも良好なので是非多くの方に出席いただくようお願い申し上げる」
(以下詳細は紙パルプ技術タイムス2017年8月号で)