日本製紙/食品、化粧品向けCNFの量産化を決定
日本製紙はこのほど、ケミカル事業本部江津事業所(島根県江津市)に、食品、化粧品向けCNF(セルロースナノファイバー)量産設備を設置することを決めた。
同設備は食品添加物として販売しているカルボキシメチルセルロース(CMC)の製造技術を応用したCNF製造設備で、投資額は約11億円。年間生産量は当面30tとし、将来的には100tまで増産可能な設備にする予定。完成予定は2017年9月。
同社は長年にわたり、江津事業所を中心に、セルロース誘導体など木材成分を利用した機能性ケミカル製品を製造し、日本を含めた世界市場で販売展開してきた。その一つであるCMCは、木材セルロースを原料とするアニオン系水溶性高分子で、優れた増粘性・吸水性・保水性を発揮する天然由来の添加剤として、食品や化粧品などで幅広く使われている。
日本製紙はCNFの新たな展開の一つとしてこれに着目、CMCの製造技術を用いて化学処理した木材パルプからカルボキシメチル化CNF(CM化CNF)を得る製法を確立した。このCM化CNFは、繊維幅が数nm~数十nmのミクロフィブリルセルロース(MFC)であり、同社がすでに手掛けているTEMPO触媒酸化法によるCNF(繊維幅3nm)とは異なる繊維形態となっている。CM化CNFは温度変化による粘度変化が小さく、「ネバツキがない」「チキソ性を有する(撹拌すると時間とともに粘度が低くなるが、撹拌を止めると元の粘度に戻る性質)」など、CMCをはじめとする従来の添加剤(増粘剤)にない特長がある。さらに、水分散したCNFを固形化する技術(水分率10%以下)も併せて確立し、CNFの腐敗防止や輸送コストの削減も達成した。
同社は現在、事業領域の拡大を図る中で、その中核となる新素材CNFについては、石巻工場(宮城県石巻市)にTEMPO酸化CNFの量産設備の建設を進めるなど、技術開発を加速させている。今回江津事業所に建設を決めた設備は、同社のナノセルロースの量産機としては2例目となる。
(Future 2016年9月5日号)