日本製紙/石巻工場に世界最大級のCNF量産設備を建設
日本製紙は、石巻工場にセルロースナノファイバー(CNF)の量産設備の建設を決めた。東京大学大学院農学生命科学研究科・磯貝明教授らが開発したTEMPO触媒酸化法により化学処理した木材パルプからCNFを量産する設備で、設備能力は500t/年、稼働は2017年4月を予定している。投資額は16億円。これにより石巻工場は、印刷・情報用紙から発電事業、リサイクル事業に加え、新素材であるCNFの生産拠点として基盤強化を図る。
新設備で生産するTEMPO酸化CNFは、木材パルプをナノレベルまで細かく解繊した繊維。繊維幅が3~4nmと均一に完全ナノ分散したセルロースナノファイバーで、結晶性が高いことが特徴である。また、軽量で弾性率が大きく、熱寸法安定性が良好、ガスバリア性が高いといった、これまでの素材にない優れた特性をもつ。さらに、CNF表面にカルボキシル基が高密度で規則的に配列しているため、金属イオンや金属ナノ粒子を大量に担持させることができ、さまざまな機能付与が可能。
日本製紙は2007年から本格的にCNF製造技術の開発に取り組み、2013年10月には山口県の岩国工場に年間生産能力30tの実証設備を設置、昨年には抗菌・消臭効果のある金属イオンをCNF表面に大量に担持させ、シート化することに成功している。この技術を用いてグループの日本製紙クレシアは、世界で初めて機能性CNFを使用したヘルスケア商品(軽失禁用品、大人用紙おむつ)を実用化した。今後は、実用化した機能性CNFの利用拡大とともに、CNFの粘性や保水性を活かした機能性添加剤用途についても実用化する予定。
同社ではさらに、ガラス繊維並みの熱寸法安定性や高ガスバリア性を利用した「機能性シート」、樹脂やゴムとの「ナノ複合材」など、幅広い展開を進めており、これらの有望用途で早期の市場獲得を目指す。CNFの量産化により、産業分野への幅広い応用を加速させる考え。
(Future 2016年6月6日号)