日本製紙/ハンガリーに新工場LiB用CMC生産体制を強化
日本製紙は、欧州で急速に市場が拡大する電気自動車(=EV)の車載用リチウムイオンバッテリー(=LiB)の、負極材料の一つとして用いられるCMC(カルボキシメチルセルロース)の供給体制を強化するため、ハンガリーに製造販売子会社を設立した。2024年12月の稼働予定で新工場を建設する。
CMCは、天然セルロースを高純度に精製したパルプを原料として得られるアニオン系水溶性高分子。環境に優しい素材であり、その優れた増粘性・吸収性・保水性から、食品・歯磨きペーストなどの日用品のほか、製紙などの工業用途で広範囲に使用されてきたが、近年はLiB用途も大きく伸長している。日本製紙の開発品であるLiB用CMC『SUNROSE MAC』は、LiB負極材料(グラファイト)塗工液の高機能性添加剤として使用される。均一な塗工膜の形成が可能になり、安全性に優れることから、スマートフォン・PCなどの民生用や、再生可能エネルギー蓄電用に加え、EV車載用途でも高く評価されている。
EV車載用のLiB市場は、CO2の排出規制が進む欧州で急速に拡大している。また欧州の自動車産業は、域内でのサプライチェーン構築を掲げており、中国、韓国などの自動車部品・LiBメーカーも欧州域内での工場建設計画を相次いで発表している。こうした状況に対応するため、日本製紙は2021年に江津工場のLiB用CMC生産体制を強化、さらに今回、ハンガリーでの新工場建設を決めたもの。新工場では、売上高約5,000万ユーロ、約60名の雇用創出を計画している。江津工場とハンガリーの2拠点で、高性能なLiB用CMCの供給体制を構築していく。
【設立会社の概要】▽会社名:Nippon Paper Chemicals Europe Zrt.▽所在地:ハンガリー・ブダペスト市▽設立:2022年9月▽資本金:1,000万ユーロ(日本製紙100%)▽事業内容:『SUNROSE MAC』の製造および販売
(FUTURE 2023年3月6日号)