大王製紙/高透明度CNFを開発し9月からサンプル提供開始
大王製紙は、透明度の高いセルロースナノファイバー(=CNF)製造技術「亜リン酸エステル化法」の開発に成功した。9月から、高透明度CNFとして“ELLEX-☆(エレックススター)”の名称でサンプル提供を開始する。同社従来品の“ELLEX-S”と合わせ、さまざまなユーザーニーズに対応できるサンプルラインナップで用途開発を加速させていく。
同社は2013年から繊維幅が数10nmのCNF水分散液のサンプル提供を開始しており、16年にはCNF事業化に向けた課題である製造コストの低減を目的に、省エネ型CNF製造プロセス開発のためのパイロットプラント(年間100t)を稼働させ、コスト競争力のあるCNF製造技術の開発を進めている。サンプルは、現在までに400社程度に提供し、CNF添加の効果が確認されたコンクリート、塗料などの分野でユーザーと共同で用途開発に取り組んでいる。
また、樹脂・ゴムとの複合化に適したCNF乾燥体、高強度・熱特性に優れるCNF成形体といった、水分散液とは異なる形態でのサンプル提供も行っており、自動車用部品、電化製品、塗料、食品、化粧品、紙・板紙や家庭紙製品などへの用途展開を目指した開発も進めている。
一方、化粧品、塗料、インキなどの意匠性が要求される用途やフィルム、ディスプレイなどの光学系材料については、透明性に対する要望が高く、これらのニーズに適うCNF製造技術の開発も行ってきた。今回開発に成功した「亜リン酸エステル化法」は、繊維幅3~4nmまで容易に微細化でき、高い透明性を有するCNFを製造できることから、同社では従来のCNFでは難しかった用途への展開を期待している。今後、サンプル提供を通じて用途展開を進めていくとともに、量産技術の開発に取り組んでいく予定。同社CNFの品質特徴は次記の通り。
“ELLEX-☆”(亜リン酸エステル化CNF)
原 料:化学パルプ
繊維幅:3~4nm
透明度(0.2%水分散液の光透過率):約92%
“ELLEX-S”『(従来品)
原 料:化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ
繊維幅:数10nm
透明度(0.2%水分散液の光透過率):約5%
(Future 2018年8月27日号)