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ふじのくにCNFフォーラム/設立後第2回目となるセミナーを開催


産学官連携によるセルロースナノファイバー(CNF)の研究・製品化を支援する目的で設立された「ふじのくにCNFフォーラム」は昨年11月10日、第2回目となるセミナーを開催した。会場は富士市勤労者総合福祉センター「ラ・ホール富士」の2階多目的ホールで、今回も定員250名を超える参加者が集まり、引き続きCNFへの高い関心や期待が窺われた。主催は静岡県と富士市。
冒頭、静岡県経済産業部長・篠原清志氏が挨拶し、続いて以下の講演へと移った。
(1) 学術講演/CNFの用途開発〜静岡大学の提案

(静岡大学・副学長、教育学部教授/澤渡千枝氏)
静岡大学ではライフ・イノベーション、グリーン・イノベーションを掲げた政府の「科学技術基本計画」を先取りすべく超領域研究推進本部を設置し、第2期(平成22〜27年)中期計画では生命原理や機能を光・電子・ナノテクノロジーと融合した「ナノバイオ科学」を重点研究とした。同大学の澤渡研究室では微生物がつくるバイオナノファイバーであるバクテリアセルロース(BC)について研究しており、講演ではCNFに関する基礎知識を改めて解説するとともに、その代表的な製法(TEMPO触媒酸化法、機械力による方法、水中カウンターコリジョン法、酵素分解法)、原料および用途、使い方(単独か複合化か)などが述べられた。
静岡大学の取組みについては前出のBCを含むセルロース関係のほか、バイオマスプラスチックや石油系合成高分子、これらの複合系についての研究、特許出願などの成果を報告。また「静岡大学 イノベーション社会連携機構」は豊富な研究者を活かすための「研究活用支援部門」を浜松と静岡分室に設置、セルロース素材とその応用、構造解析、物性評価、環境調査などに関して産学連携を強化している。また「セルロース学会」の活動や書籍についても触れた。
(2) 国からの報告/セルロースナノファイバー(CNF)に関する環境省の取組について(環境省・地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室室長補佐/峯岸律子氏)
環境省では、地球温暖化対策としてイノベーションによる革新的な技術を活用した低炭素化を志向、その1つとして今年度からCNFの実用化を環境政策のなかに位置づけた。社会実装に向けたCNF用途開発FSは静岡大学、三重県産業支援センター、岡山県の3者に業務委託され、このうち静岡大学ではトクラス㈱を共同事業者として住宅部材用途で製品を製造、その性能を確認した。これに続いて次年度からは5年間の事業として自動車インパネ部材とした場合の燃費向上効果やCO2削減効果について検証を行う計画である。
(3) 富士工業技術支援センターの取組〜CNF関連事業のご紹介

(富士工業技術支援センター・センター長/神谷眞好氏)
同センターでは調査、研究、人材育成の3つを柱として活動、今年度中に実施する調査としては、情報収集に加え、CNFを応用した紙の試作とその物性評価がある。
また研究については平成28〜30年度に、①製紙原料としてのCNFの物性調査と紙への応用、②CNF利用紙製品のリサイクル性評価、③CNFの特性を活かした応用展開─に取り組み、このうち③ではIJ用紙や鮮度保持機能をもつ包装材への応用、また塗料や接着剤への機能付与を研究する。
人材育成に向けてはこの12月から平成28年3月までに講演会を3回開くほか、県内各企業の技術者を対象としたCNFの取扱い実習を10回開催する。また本センター内に大学、公的機関、企業などのCNFの研究成果や製品をバネルで展示する。
(4) 企業の取組発表/CNFのウッドプラスチックヘの利用

静岡地域でのCNF住宅部材利用におけるFS検証〜(トクラス・事業開発推進部WPC事業推進グループグループ長/伊藤弘和氏)
住宅部材用ウッドプラスチックにCNFを添加することで、流動性や耐水性を向上できる。同社ではCNFを利用したキッチン部材を製造し、住宅へ使用、さらに廃棄(リサイクル)する際のCO2削減ポテンシャルを推計。今後のFS検証ではリサイクル材として役立つか、また市場規模の把握が、事業性評価のポイントになると考えている。
(5) (公財)静岡県産業振興財団からの報告/研究開発に対する助成に関する募集「平成28年度地域活性化事業」

(静岡県産業振興財団・研究開発支援チームチームリーダー/飯野修氏)
CNF利用製品の研究開発に役立つ助成金制度について紹介した。

(紙パルプ技術タイムス2016年1月号)

 

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