業界ニュース

中越パルプ工業/王子HDと資本・業務提携結び第三者割当増資で持分法適用会社に
 中越パルプ工業は王子ホールディングス(HD)と資本・業務提携を結んだ。第三者割当増資で王子の株式保有比率を9%から21%に引き上げ、同社の持分法適用会社となるほか、原料・資材調達や物流面で共同化を進める。また増資によって調達した約32億円の資金は、川内工場クラフト紙マシンの増産対策工事と高岡工場Nパルプ晒設備更新工事に充当する。
 グラフィック系用紙のウェイトが高い同社は、需要構造の変化や輸入紙との競合によって厳しい経営環境に直面している。さらに、この1年で急速に進んだ円安は製紙各社の原燃料調達コストを押し上げているが、連結で年商1,000億円に満たない同社の規模では体力的にも苦しい。
 王子HDは従来から中パの筆頭株主であり、歴代社長も王子の出身者が多かった。しかし両社の関係がそれ以上進むことはなく、この間は王子からすれば静観状態、中パからすれば自力によるサバイバルの模索が続いてきた。しかし最終的には困難さを増す昨今の経営環境が、両社の背中を押す形になった。
 今回の提携について中パは次のように説明している(要旨)。
 「電子化の影響による需要構造の変化、円安による原燃料・資材価格の高騰など、日本の製紙業界を取り巻く経営環境は近年急速に変化している。このような状況下、当社グループでは2013年5月に策定した中長期成長戦略プラン『ネクストステージ50』に基づき、食品容器分野を中心とする高級白板紙・加工原紙の新規需要開拓、グループ製袋事業の発展強化、木質バイオマス燃料発電設備の新設をはじめとするエネルギー事業への参入、生産体制の見直しを含めた抜本的なコスト削減対策、新素材セルロースナノファイバーの研究開発促進――を柱とする新たな収益基盤の確立に邁進し、独自性の強化で、より存在感のある企業を目指してきた。
 こうした中、当社と王子HDは両社の経営資源を相互に有効活用することにより、投資・資金効率の一層の向上を目的に業務・資本提携を実施する。王子HDは以前より当社の筆頭株主であり、両社間で技術交流、人事交流、共同購買を一部実施していたが、この業務・資本提携により今後は輸入原燃料や資材の共同調達、相互技術協力支援、成長事業分野におけるアライアンスなどに分野を広げていく。これらの業務提携は、当社の『ネクストステージ50』、とりわけ抜本的なコスト削減対策を一段と推進するものであり、ひいては企業価値の向上に資すると考える。当社はこの業務・資本提携を通じて、生産能力の向上、コスト競争力の強化、財務基盤の強化を実現し、さらなる企業価値の向上を図っていく」
 〔資本提携の内容〕
 中パが第三者割当増資により新株式の発行と自社株式の処分を行い、王子HDがその全株式を引き受ける。これによる株主構成の変化は表を参照。
 〔業務提携の内容〕
 (1) 輸入原燃料の共同調達とチップ船の共同運航
 (2) 相互技術協力支援
 (3) 資材の共同調達と製品の共同物流
 (4) 成長事業分野でのアライアンス
 〔増資による調達資金の使途〕
 今回の提携案件とは別に作成している設備投資計画に基づき、約32億円のうち10億円を川内工場3号マシン競争力強化対策(抄紙設備一部更新による品質向上、効率向上、クラフト紙135t/月の増産、コスト削減)に、残額(22億円)を2017年1月末までに高岡工場の針葉樹系パルプ漂白設備更新に充当する予定。

(Future 2014年12月22日号)

王子ホールディングス/ベトナムに段ボール工場を新設
 王子グループは2016年1月の営業開始を目途にベトナムで段ボールの新工場を建設する。総投資額は約30億円。
 事業構造転換を推進している王子グループでは、「海外事業のさらなる拡大」をその大きな柱の一つとして掲げ、とりわけパッケージング事業については、経済成長を続ける東南アジアおよびインド地域での積極的な事業展開を進めている。インドで今年7月に稼働した段ボール工場を含め、同地域ですでに20ヵ所に工場を所有、また来年5月にはミャンマーで新工場が稼働する予定だ。
 王子グループのベトナムでの操業は2000年からで、南部のドンナイ省、北部のハイフォン市とバクニン省の3ヵ所に、段ボール製造拠点と昨年買収した紙器加工のUnited Packaging (UP)社を合わせた計4製造拠点を有しており、今回の新工場はベトナム国内で5番目の製造拠点となる。
 建設予定地は南部のホーチミン市街中心部から北西へ約40kmのビンズオン省VSIP-II工業団地内で、王子ホールディングス100%子会社であるOjitex (Vietnam) Co., Ltd.の第二工場となる。生産能力は段ボール製品4,200万m2/年。
 ベトナム南部はベトナム経済の成長に加えて東西経済回廊と南部経済回廊に接する地理上のメリットや豊富な労働力などにより、各種製造業の進出が加速し包装資材の需要が増加している。また、東南アジア諸国のパッケージング市場では多彩な表面印刷が好まれる傾向があり、段ボール製品についても美粧化の要求が高まってきている。王子グループではこの市場ニーズに応えるべく、新工場には美粧印刷機を導入し、UP社のオフセット事業と合わせ、ベトナム南部地域のユーザーニーズに即した包装資材を提供していく。

(Future 2014年12月15日号)

レンゴー/日本マタイと森下を合併
 レンゴーは連結業績向上のため、重包装事業の主要連結子会社である日本マタイと森下鰍フ合併を、2015年4月1日を目途に行う。合併方式は、日本マタイを存続会社とする吸収合併方式で、森下は解散する。レンゴーの完全子会社同士の合併であるため、新株発行および資本金の増加はない。
 〔日本マタイの概要〕
 本  社;東京都台東区元浅草2-6-7
 代 表 者;藤田真夫氏
 資 本 金;72億9,200万円
 株  主;レンゴー100.0%
 事業内容;コンテナバッグなどの包装資材、合成樹脂製品の製造・販売
 売 上 高:288億600万円(2014年3月期)
 従 業 員;506名
 〔森下の概要〕
 本  社;岡山県瀬戸内市長船町磯上1900
 代 表 者;神ア恭氏
 資 本 金;1億円
 株  主;レンゴー96.44%、中国銀行3.56%(12月にレンゴーが中国銀行の持分全量を譲り受けレンゴー出資比率100%へ)
 事業内容;コンテナバッグなどの包装資材、合成樹脂製品、各種ネット製品の製造・販売
 売 上 高;78億2,700万円(2014年3月期)
 従 業 員;169名
 〔合併後の状況(予定)〕
 商  号;日本マタイ
 本  社;東京都台東区元浅草2-6-7
 代 表 者;藤田真夫氏
 資 本 金;72億9,200万円
 株  主;レンゴー100%
 事業内容;コンテナバッグなどの包装資材、合成樹脂製品、各種ネット製品の製造・販売

(Future 2015年1月5日号)

大王製紙/インドネシアにベビー用紙おむつ製造会社を設立
 大王製紙は11月、インドネシアにベビー用紙おむつの生産拠点として、製造会社「エリエール インターナショナル マニュファクチャリング インドネシア」(PT. Elleair International Manufacturing Indonesia)を設立した。2015年中に生産を開始し、16年年初より出荷する。
 大王製紙は11年1月、ASEAN域内のほぼ中心に位置するタイに、製造・販売拠点として連結子会社の「エリエール インターナショナル タイランド」を設立、タイと周辺国への販売数量の伸長に合わせて製造ラインを増強してきた。さらに、域内の最大消費国であるインドネシアでは、13年3月に販売会社「エリエール インターナショナル トレーディング インドネシア」(所在地:ジャカルタ)を設立し、今回の製造会社設立に先行してマーケティング活動を行い、ブランドの認知向上と販売数量の拡大を進めてきた。
 インドネシアの出生人口は年間440万人以上と日本の約4.4倍に上り、また生活水準の向上もあって、ベビー用紙おむつの需要は年率20%前後の継続成長が見込まれている。この世界有数の成長市場で、現地生産化による安定供給とコスト低減を図るため、インドネシア国内にASEANで2ヵ所目となる製造拠点を設立したもの。
 〔新会社の概要〕
 事業内容;紙おむつの製造
 所 在 地;西ジャワ州ブカシ県ブカシ国際工業団地
 資 本 金;1,600億ルピア(15.2億円。1ルピア0.0095円で計算)
 出資構成;大王製紙グループ100%
 設 立 日;2014年11月27日
 敷地面積;約3万9,000m2
 設備投資;当初約70億円

(Future 2015年1月5日号)

大丸藤井、日藤/経営統合により紙・文具卸でトップ10入り目指す
 紙類・文具卸で北海道内最大手の大丸藤井(札幌)と、同業で道内大手の日藤(札幌)は、2015年2月に経営統合することで基本合意した。共同で持株会社を設立して両社がその傘下に入る。両社の売上高を合算すると700億円に迫り、業界で全国トップ10入りをうかがう規模となる。規模拡大により経営を効率化し、競争が激化する業界で勝ち残りを目指す。
 持株会社の名称は「大丸藤井日藤ホールディングス」とし、本社は札幌に置く。持株会社の社長には大丸藤井社長の藤井敬一氏が就任し、副社長には日藤社長の山川泰司氏が就く見通し。当面は両社の商号を残したまま事業を続けるが、将来的には関連会社を含めた合併も視野に入れている模様だ。
 人口減やペーパーレス化を背景に紙製品市場は縮小傾向にある。今後大きくは成長しないと見られる一方で、流通は商社系など大手卸がひしめき、価格競争は激しくなっている。文具業界の市場は長期にわたり漸減し続けており、こうした経営統合の必要性を指摘する声は以前からあった。
 〔大丸藤井の概要〕
 所 在 地;札幌市白石区菊水3条1-8-20
 代 表 者;藤井敬一・取締役社長
 創  業;1892年8月25日
 設  立;1922年5月10日
 資 本 金;4億8,000万円
 売 上 高;495億4,000万円(2014年6月期)
 従 業 員;779名(うち正社員540名)
 事業内容;洋紙、板紙、文具、事務用品、紙製品、情報機器、オフィス家具、インテリア、家庭雑貨、日用品、化成品、包装資材、FA機器などの販売および店舗設備、環境設計
 事 業 所;本社・営業部、セントラル/札幌、支店=道北(旭川)、道東(帯広)、函館、青森、仙台、東京、出張所=室蘭、北見、釧路
 〔日藤の概要〕
 所 在 地;札幌市中央区北3条西14-2
 代 表 者;記田正三:代表取締役会長、山川泰司代取社長
 創  業;1937年2月
 設  立;1948年5月12日
 資 本 金;2億1,790万8,000円
 売 上 高;124億1,100万円(2013年9月期)
 主要取引銀行;北海道銀行札幌駅前支店
 従 業 員;93名(2013年9月)
 事業内容;大丸藤井とほぼ同じ
 事 業 所;支店=道北(旭川)、道南(函館)、道東(帯広)、営業所=釧路、東京

(Future 2014年12月22日号)

大石産業/三和紙工の第三者割当増資を引受
 大石産業は、巴川製紙所の子会社である三和紙工が募集する第三者割当増資を引き受けた。
 大石産業は2003年に三和紙工と業務提携し、関東市場での生産体制を構築して品質とコスト競争力の向上を図ってきたが、厳しさが増す国内紙袋業界にあって協力体制をさらに強化するため、三和紙工が発行する株式3万株を買い受けたもの。大石産業は、これまで三和紙工の株式は保有しておらず、増資引受後の出資比率は4.76%となる。今後は協力体制の強化により、多様で安定的な供給力の強化を図っていく。なお、株式取得は手元資金で賄うとしている。
 〔三和紙工の概要〕
 本  社;東京都中央区日本橋小伝馬町4-9(小伝馬町日本橋ビル9階)
 代 表 者;永田哲雄・代表取締役社長
 事業内容;クラフト紙袋の製造・販売
 売 上 高;29億6,600万円(2014年3月期)
 従 業 員;115名

(Future 2014年12月22日号)

日本紙パルプ商事/複合書店「BOWL」を埼玉県にオープン
 日本紙パルプ商事は、子会社の潟梶[ディングポートJPを通じ、書籍・雑貨販売とカフェを組み合わせた複合書店の一号店「BOWL(ボウル)」を、2015年春開業の「ららぽーと富士見」(埼玉県富士見市)にオープンする。リーディングポートJPは、日本紙パルプ商事が複合書店事業への参入に向けて設立した新会社(本誌9月22日号詳報)。
 「BOWL」は、同一テーマの本と雑貨を同じ棚に陳列したり、購入前の本をカフェスペースで軽食とともに試読できるなど、既存の書店スタイルにとらわれない新しい形態の書店。またカフェスペースでは、サイン会やトークショウなどのイベント会場としても貸出ししていく予定。
 〔BOWLの概要〕
 所 在 地;〒354-0022 埼玉県富士見市山室1-1259(ららぽーと富士見・1F)
 店舗面積;418.78u(126.68坪)
 営業内容;雑誌・書籍・雑貨などの販売、カフェ
 営業開始;2015年4月10日

(Future 2014年12月22日号)

古紙再生促進センター/日中古紙セミナーに280人が参加・聴講
 古紙再生促進センターは去る11月19日、中国再生資源回収利用協会・江蘇省造紙行業協会・浙江省造紙行業協会との共催により、第3回日中古紙セミナーを東京都内で開催した。
 日中古紙セミナーは2011年10月に東京で初めて開催され、13年11月に第2回セミナーが中国・浙江省杭州市で開催された。今回は中国から4名の講師のほか約60人が来日して参加。会場内は、日本側と合わせ280人近くの参加者で満員の盛況ぶり。日中双方の関心の高さをうかがわせた。
 冒頭、主催者挨拶に立った古紙再生促進センター代表理事の岩瀬広徳氏は、「日中両国ともグローバルな視点で、古紙の流通・利用を考える時代が到来した。両国の古紙・製紙関係者が相互理解を深め、連携を強めることは、両国社会・経済の循環型への転換を推進し、古紙・製紙産業の安定、繁栄に寄与するものと確信する」と述べた。講師と演題は次のとおり。
 「日本の古紙再生と品質基準の推進」榮成紙業・総経理/〓長坤氏
 「安徽山鷹の現状と将来・購買方針について」安徽山鷹紙業・総経理/舒君明氏
 「浙江省製紙産業の古紙利用現状および発展趨勢」浙江省造紙行業協会・常務副秘書長/鄭夢樵氏
 「中国古紙分類標準および古紙輸入最新策」中国再生資源回収利用協会・副会長兼秘書長/潘永剛氏
 講演終了後の質疑応答の時間には会場からたくさんの質問が寄せられた。来年度は中国・江蘇省で第4回日中古紙セミナーが開催される予定。

(Future 2014年12月15日号)

古紙再生促進センター/「輸出委員会」が正式発足

 かねて話題になっていた古紙再生促進センターの「輸出委員会」が正式発足した。
 去る12月4日に都内で開かれた第1回会合において、初代委員長に日本紙パルプ商事理事で古紙事業本部長の安藤彰朗氏が選任されたほか、委員会のメンバー構成が定まった。今後は年に2回開催の幹事会、4回開催の定例会、課題に応じて臨時に編成される小委員会を通じて、古紙輸出体制の整備を図る。
 古紙センターによる輸出委員会の設立は、主に次の二つの理由で注目されていた。
 (1) 古紙センターは1974年の発足以来、製紙メーカーと古紙問屋を車の両輪として運営されてきた。今回そこに初めて輸出を手がける商社が加わり、その中には日系だけでなく外資系も含まれている。
 (2) 古紙センターの事業は、会員の製紙メーカーと古紙問屋が古紙の売買に応じて支払う会費(t当たり6円)によって運営されているが、これまでは国内取引のみを会費徴収の対象としてきた。だが輸出委員会は日本の古紙品質の維持・向上を大義名分に、古紙輸出業者(商社、古紙問屋)からも会費を徴収する。
 上記のうち(2)について詳しく説明すると、第1回会合では会費について当面、輸出業者の取扱数量に関わりなく一律に年間36万円とした。会費の徴収は2015年度から行い、輸出委員会の設立後2年が経過した段階で見直しを検討するとしている。したがって国内と同じような従量制の会費徴収は、仮に実現しても2017年度以降からとなる。
 なお輸出委員会構成メンバーのうち、新たに古紙センターに加わった商社は次の通り。
 ・日本紙パルプ商事
 ・国際紙パルプ商事
 ・日商岩井紙パルプ
 ・丸紅ペーパーリサイクル
 ・ジェーオーピー
 ・王子通商
 ・日本紙通商
 ・旭洋紙パルプ
 ・山發日本
 ・サイコリンク
 ・西東京通商
 ・トーチインターナショナル
 ・美国中南日本
 ・エコマット産業
古紙センターは輸出委員会の設立趣旨を次のように説明している(要旨)。
 「日本の古紙回収率は80%に達しているが、都市部を中心に紙ゴミのさらなる資源化要請は強いものがある。一方、回収された古紙は国内利用だけでは限界があることから、古紙輸出比率は20%を超え、日本の古紙市況、需給、品質面で大きな影響を及ぼし、輸出古紙は日本の紙リサイクルの盛衰を左右する存在になっている。
 当センターは国内リサイクルを想定して設立され、運営されてきたが、今後の日本における紙リサイクルシステムの維持・発展を考慮し、海外リサイクルも含めた活動の展開が喫緊の課題と認識し、輸出古紙品質の安定化などの諸課題への対応を図ることを目的に、当センター内に関係者による輸出委員会を設立する」
 定められた輸出委員会の活動目的は
 ・古紙回収率の向上(未利用資源の資源化)
 ・古紙品質の向上による、内外市場における日本古紙の利用度向上
 ・古紙輸出体制の整備
の3点。これに基づいて次のような事業を実施する。
 (1) 輸出古紙品種分類、銘柄、内容の整理
 (2) 輸出古紙標準品質規格の設定(含:禁忌品区分)
 (3) 輸出古紙取引ルールの設定
 (4) 輸出古紙取引クレーム処理手続きの設定
 (5) 輸出古紙品質規格遵守に向けた取組み(委員会会員名簿の整理と優良流通業者の認知*ラベル添付*品質データの収集)
 (6) 内外古紙需給情報の収集
 (7) 輸出古紙リサイクルに関わる諸問題の取組み(持ち去り古紙の取扱いなど)
 第1回会合の終了後に開かれた懇親会では冒頭、初代の輸出委員長に就任した安藤彰朗氏が「このように大勢の人々の賛同を得て輸出委員会が発足できるのは、誠に喜ばしい。今や、国内古紙と輸出古紙を切り離しては考えられない時代になっている。リサイクルシステムを総合的に守り発展させていくうえで、また一歩前進できたのではないか。種々問題を抱えてもいるが、一つひとつの課題に対して前向きな検討と取り組みを重ね、古紙市場の安定に寄与していける委員会としていきたい。そのためにも皆さんの協力と支援が必要」と挨拶。
 続いて外資系商社を代表してトーチインターナショナルの龍国志社長、製紙メーカーを代表して王子エコマテリアルの田口満専務がそれぞれ所信を述べ、栗原正雄副理事長の発声で乾杯、祝宴に入り、定刻すぎまで歓談が続いた後、大久保信髟尢搦亦キの閉会挨拶で幕を閉じた。

(Future 2014年12月22日号)

日本製紙、伊藤園、凸版印刷/ノンアルミフジパックがエコプロダクツ大賞優秀賞
 日本製紙が凸版印刷のフィルムを用いて開発し、伊藤園が飲料用ECO容器として採用したレンガ型アルミレス紙パック容器『ノンアルミフジパック』が、エコプロダクツ大賞推進協議会が主催する「第11回エコプロダクツ大賞」において、エコプロダクツ部門エコプロダクツ大賞推進協議会会長賞(優秀賞)を受賞した。
 エコプロダクツの開発・普及を目的に2004年から開催されている「エコプロダクツ大賞」は、エコプ「エコプロダクツ部門」と「エコサービス部門」で構成され、今回『ノンアルミフジパック』が受賞したエコプロダクツ大賞推進協議会会長賞(優秀賞)は大賞に次ぐ賞となる。
 『ノンアルミフジパック』は、アルミ箔と同等レベルのバリア性を持ちながらリサイクル適性も備えた透明ハイバリアフィルム「GLフィルム」を採用し、常温流通と長期保存を可能にした液体用紙容器。屋根型紙パックと同様にリサイクルできるため、CO2排出量の低減にもつながる。

(Future 2014年12月15日号)

大日本印刷/バイオマスプラスチック使用の断熱紙容器を開発
 大日本印刷は植物由来原料の「バイオマテックPETフィルム」とポリエチレン樹脂を使用した断熱紙容器“HI-CUP-Bio(エイチアイ-カップ-バイオ)”を国内で初めて開発、カップスープや縦型カップ麺向け容器として12月11日から販売を開始した。
 大日本印刷は、植物由来の原料などによるポリエチレンテレフタレート(PET)を使ったバイオマテックPETフィルムを世界に先駆けて2012年から量産開始するなど、環境負荷が低い包装材を多数開発してきた。13年にはバリア性を高めた透明蒸着フィルム「バイオマテックIB-PETフィルム」を、14年7月にはバリア性と遮光性に優れたアルミ蒸着フィルム「バイオマテックVM-PET」を製品化し、さらに9月には植物由来のポリエチレンを紙の表裏にラミネートした液体用紙容器“L-Bio”を開発している。
 大日本印刷が1998年に開発した断熱紙容器“HI-CUP”は、紙製の内カップと外装紙の間に断熱効果を生む空気層を形成し、味噌汁やスープ、ラーメン、どんぶり物などの容器として幅広く採用されてきた。HI-CUPでは内容物の移り香と湿気を防ぐため、紙カップの内面にPETフィルムやナイロンフィルムをポリエチレン樹脂で貼り合わせているが、今回開発したHI-CUP-Bioは、PETフィルムやナイロンフィルムの代わりに「バイオマテックPETフィルム」を使用し、ポリエチレン樹脂の代替として植物由来のポリエチレン「バイオマテックPE」を使用。HI-CUPとバイオマテックシリーズのそれぞれの強みを組み合わせた製品となっている。バイオマス度20%のPETフィルムと95%のポリエチレン樹脂を使用することにより、紙製の外装部分を含め、容器全体で95%以上のバイオマス度を達成したことになる。
 大日本印刷は今後、食品・飲料・日用品メーカーに対して容器のバイオマテックシリーズへの切り替えを促していく考えで、同シリーズの普及とともに、HI-CUP-BioやL-Bioなどにより紙容器のバイオマス化を進めていく。目標売上げとしては、バイオマテックシリーズを利用した包装材で2017年度累計150億円を目指す。

(Future 2015年1月5日号)

レンゴー/タイの段ボール工場が15工場へ拡大
 レンゴーのタイにおける合弁会社、タイ・コンテナーズ・グループ社(TCG社)は、子会社を通じ、バンコク近郊のナコーンパトム県にある段ボールメーカー「D-イン・パック社」の全株式を取得した。D-イン・パック社の生産能力は約1万5,000t/年、売上高は1億2,300万バーツ(2013年度実績)。
 タイはASEAN諸国のなかでも製造拠点として多くの日系企業が進出しており、国民所得の増加とともに今後も段ボール需要の伸びが期待されている。今回の株式取得により、レンゴーグループのタイでの段ボール生産拠点は15工場に拡大する。
 レンゴーは、タイをはじめ東南アジアでの段ボール事業を海外事業の重要な戦略事業と位置付けており、「今後も段ボール供給体制の一層の充実を図る」としている

(Future 2014年12月1日号)

日本製紙/トンネル被覆工事にCfFAを提供
 日本製紙は日本製紙ゼロテクノ東北有限責任事業組合(日本製紙ゼロテクノ東北LLPを通じて、熊谷組が実施する国土交通省東北地方整備局発注の国道45号・釜石山田道路工事のトンネル覆工工事で使われるコンクリート用混和材として高品質フライアッシュ“CfFA”(Carbon-free Fly Ash)を提供した。震災復興の関連工事でCfFA?が適用されたのは今回が初.
 今年7月1日に日本製紙とゼロテクノ(大分県)が中心となって設立した日本製紙ゼロテクノ東北LLPは、石巻工場の自家発電用石炭ボイラー燃焼灰から排出される焼却灰を活用しCfFA?を製造・供給する新事業を開始。すでに工場敷地内への製造設備建設も進めており、2016年1月からの本格稼働を予定しているが、それに先駆けてサンプル供給を行っており、今回の適用はその一例。
 フライアッシュを混入した場合、一般的に40年とされているコンクリートの寿命が60〜100年に延長できると言われ、長期間にわたり耐久性を発現する。またCfFAはコンクリート用混和材として品質が安定し使用しやすいことから、今後の利用拡大が期待されている。

(紙パルプ技術タイムス 2014年12月号)

紙・板紙需給10月/国内出荷が7ヵ月連続で減少
 日本製紙連合会が集計した10月の紙・板紙国内出荷は、前年同月比△2.4%と、7ヵ月連続で減少した。うち紙は△4.5%の121.3万tで7ヵ月連続のマイナス、一方板紙は+0.3%の100.1万tで2ヵ月連続の増加となった。主要品種は情報用紙、段ボール原紙を除き減少している。
 紙・板紙の輸出は前年同月比+25.6%の9.5万tで、4ヵ月連続の増加。うち紙は+19.0%の7.1万tで、東アジア、北米、大洋州向けを中心に4ヵ月連続のプラスとなった。板紙は+51.5%の2.3万tで、東南アジア向けを中心に24ヵ月連続増。
 紙・板紙の月末在庫は前月比△7.3万tの196.8万tとなり、2ヵ月連続で減少した。うち紙は△5.2万tの134.4万tで、印刷・情報用紙(塗工紙)を中心に2ヵ月連続減。板紙は△2.1万tの62.3万tで、段ボール原紙を中心に3ヵ月ぶりに減少した。
 以下は主要品種の動向である。

 〔新聞用紙〕
 国内出荷は前年同月比△2.9%の26.6万tで、8ヵ月連続の減少となった。
 〔印刷・情報用紙〕
 国内出荷は前年同月比△6.5%の66.6万tで、7ヵ月連続のマイナス。情報用紙以外はすべて減少している。メーカー輸出は+17.0%%の5.0万tとなり、主力の塗工紙を中心に4ヵ月連続の増加。
 〔包装用紙〕
 国内出荷は前年同月比△2.2%の6.5万tと、前月の増加から減少に転じた。晒を中心に未晒も減少している。メーカー輸出は+16.0%の1.4万tとなり、過去最高を記録した。
 〔衛生用紙〕
 国内出荷は前年同月比△0.4%の15.2万tで、前月の増加から減少に転じた。トイレットペーパーは増加したがティシュは減少。
 〔板紙〕
 段ボール原紙の国内出荷は前年同月比+0.8%の79.9万t、青果物などを中心に2ヵ月連続の増加となった。白板紙は△1.0%減の12.9万tで、前月の増加から減少に転じた。

(Future 2014年12月1日号)

王子ホールディングス/マレーシアで紙おむつ事業を開始
 王子ホールディングスはマレーシアのPeople & Grit(M)社(P&M社)発行済株式の80%を取得する株式売買契約を締結した。
 P&M社は子供用紙おむつの製造・販売を手掛けており、従業員は約70人。2014年6月期売上高は5,300万マレーシア・リンギット(約18億円)、同月末時点の総資産は3,100万マレーシア・リンギット(約10億円)となっている。東南アジアでは毎年1,000万人以上の新生児が誕生しており、紙おむつ市場の更なる需要拡大が見込まれるという。
 王子グループでは成長戦略の重点施策として海外事業の更なる拡大を掲げるとともに、紙おむつ事業をその重点分野と位置づけ、今年4月にはインドネシアにおいて合弁による紙おむつ製造・販売事業に着手することを発表、現在準備を進めている。このほか王子グループは2010年にマレーシア最大の板紙・段ボールメーカーであるGS Paper & Packaging社を傘下に収め、以降も主にパッケージング会社を買収、現在では板紙2工場、段ボール6工場を保有している。

(紙パルプ技術タイムス 2014年12月号)

北越紀州製紙/中国広東省の白板紙工場竣工式に650名が参集

 北越紀州製紙がかねて中国で建設を進めていた白板紙工場が2014年7月に完成し8月より試運転を開始(写真は工場全景)。その後、抄試を重ね品質・操業とも安定してきたことを受け10月から営業運転に移行しており、11月11日には地元政府や設備のサプライヤー、工事関係者ら約650名を招き現地で竣工式が挙行した。
 同社が中国広東省江門市に年産30万tの白板紙工場建設を決定したのは2011年5月。その後10月には同社と三菱商事、香港合昌紙行(Hop Cheong)の3社合弁で、事業主体の江門星輝造紙有限公司を子会社とする投資会社が設立され、事業の枠組みが完成。翌12年12月より始まった建設工事では、北越紀州製紙グループから支援メンバー約40名が派遣され、設備の据付と調整、試運転を繰り返しながらの品質確認が行われてきた。
 地元の江門市や双水鎮政府、製紙機械メーカー・原材料メーカーなど約650名が参集した竣工式の席上、北越紀州製紙の岸本晢夫社長は次のように挨拶した。
 「本日披露する白板紙工場は、当社グループが目指すグロバーリゼーション経営の中でも主要な成長戦略の一つ。経済成長の著しい中国の華南地区において、安定した労使関係を基盤とする事業経営を通じて、高品質な紙を適正価格で多くの顧客に提供し、地域経済の発展に貢献したい」
 年産30万tの白板紙工場が本格稼働することで、同社グループは日本最大の塗工白板紙メーカーとなり、アジア市場における新たな収益基盤を確立できる。また同時にグループの次世代成長エンジンの一翼を担う主要事業として、長期経営ビジョン『Vision2020』および中期経営計画『C-next』における成長戦略をより確実なものとすることになる。さらに今後は「将来的なアジア市場の動向を見極めたうえで、生産設備の増設計画を検討していく予定」としており、グローバル市場における競争力の強化を通じて「より多くの顧客から信頼される企業グループづくりを目指す」と表明している。
 とはいえ、同社の前途には厳しい局面も待ち受けている。広東省の白板紙市場は年間約300万tのボリュームで、ガリバーの玖龍紙業が50%、2番手の理文造紙と東莞建暉紙業が各20%のシェアを確保、そして残りの10%を中小メーカーが分け合うという構造になっている。江門星輝造紙はこの市場に割って入らなければならないが、供給過剰で各プレイヤーとも採算は苦しく、ユーザーの品質要求は厳しい。
 江門星輝では他社と同様、表層にLBKPではなくDIPを使うといったコストダウンを考えているが、さらに古紙そのものについても日本からの調達を年2〜3万t程度に抑え、残りは欧米品や国内品を積極的に使用する方針を示している。
 朗報もある。同じ江門市の紙業団地内で隣接している振隆製紙が生産を停止したことに伴い、同社の従業員と敷地を江門星輝が引き継ぐことになったのだ。振隆製紙の従業員は「新設マシンの試運転に大いに活躍してくれた」(岸本社長)という。江門星輝は製紙設備の操業に慣れた従業員を確保、従業員は自身のキャリアを活かせる再就職先が見つかり、江門市は地域の雇用と税収の安定を図れる――三者がともにハッピーになるスキームだ。
 このエピソードが物語るように、江門星輝は最初から地域密着型の工場を志向している。竣工式には地元の農民代表らも招かれ、工場幹部らと日頃の労をねぎらい合った。工場内の草木の手入れは、彼らが請け負っている。「地元とは関わりのない外資系の工場」というイメージを避けるため、竣工セレモニーでは細かな配慮と工夫が目についた。工場から感謝状を受け取った関係者の中に農民代表の顔が混じっていたことは、その象徴だろう。

 〔江門星輝造紙の概要〕
 英文社名;Jiangmen Xinghui Paper Mill Co.,Ltd.
 董 事 長;岸本晢夫氏
 所 在 地;中国広東省江門市新会区双水鎮銀州湖紙業基地A区
 敷地面積;約24万m2
 生産品目;白板紙(主にコート白ボール)
 年産能力;30万t
 従 業 員;約320名

(Future 2014年11月24日号)

日本紙パルプ商事/海外市場の開拓も視野に再生家庭紙専門販社を設立
 日本紙パルプ商事(JP)はこのほど、再生家庭紙を専門に販売する100%子会社「鰍ュらしネットJP」の設立を決めた。同子会社は、再生家庭紙のメーカー5社(信栄製紙、春日製紙工業、丸井製紙、特種東海エコロジー、マスコー製紙)と代理店契約を締結する。
 生活必需品である家庭紙は、今後も底堅い需要が見込まれ、同社でも「JPグループ中期経営計画2016」の事業分野別目標として、再生家庭紙の原料から製造・販売に至るサプライチェーン拡充と機能強化を掲げている。今回の子会社設立はその一環で、これにより家庭紙販売体制の充実と販売チャネルの多様化を図る。
 再生家庭紙市場では、小売量販店の全国チェーン化が進む中、需要家からは広域サプライチェーンの要請や物流拠点の整備拡大など、安定供給・適時配送の要求がますます高まっている。それらの要求に応えるため、くらしネットJPは代理店として、再生家庭紙メーカーへの的確な需給情報の提供、ファイナンスの供与などにより、最適生産の支援を行っていくことで、需要期における機会損失をなくし、安定供給を提供していく。また、同時に全国ネットワークによる販売体制の構築や、高度な紙資源リサイクルも推進していく。
 さらに新興国をはじめ、消費者の生活レベル向上に伴い伸長が期待される海外市場にも、くらしネットJPを起点とした積極的な事業展開を推進していく。JPでは、「長年にわたり築き上げてきたグローバルネットワークと、再生家庭紙メーカー5社とのアライアンスによるスケールメリットを融合することで、個社対応では困難だった海外市場の開拓や、各国での古紙リサイクル理念の普及を目指す」と述べている。

 〔新会社概要〕
 名 称;鰍ュらしネットJP
 所在地;東京都中央区勝どき3−12−1フォアフロントタワー
 代表者;松田浩之代取社長
 資本金;1,000万円(日本紙パルプ商事100%出資)
 営業開始予定;2015年1月

(Future 2014年11月17日号)

日本紙パルプ商事/欧州で古紙販売事業を拡大
 日本紙パルプ商事(JP)の連結子会社Gould Paper Corporation傘下のPrice & Pierce(P&P社)はこのほど、Georgia-Pacific社の子会社GP Harmon Recycling LLC(GP Harmon社)の欧州古紙販売事業を取得した。
 今回の事業取得では、米国で発生する古紙を今後もP&P社が調達できる取引契約をP&P社とGP Harmon社との間で締結し、欧州でのP&P社の古紙販売事業を継続的にサポートすることも含まれている。JPでは「これにより、P&P社の既存事業の一部であるパルプおよびティシュ販売とのシナジーが期待される」としている。
 〔P&P社に加わる新たな拠点〕
 支店名;Price & Pierce Fiber
 所在地;オランダ・アムステルダム近郊
 代表者;Jeroen de Vries
 Gould Paper Corporationは1924年設立の大手紙商社で、アメリカ全土およびイギリス、フランス、フィンランドなどの地域に事業拠点を持つ。2010年4月、JPの連結子会社であるJapan Pulp & Paper (U.S.A) Corp. が株式の51%を取得し、JPの子会社となった。

(Future 2014年12月1日号)

日本製紙連合会/廃棄物対策に関する環境行動計画フォローアップ調査を実施
 日本製紙連合会はこのほど2014年度「環境行動計画(廃棄物対策)」フォローアップ調査結果(13年度実績)を公表した。
 調査は製紙連の「環境行動計画(廃棄物対策)」の進捗状況を確認するため、今年6月に実施したもの。なお、同環境行動計画では、産廃の発生抑制と有効利用を進め、15年度までに産業廃棄物の最終処分量を有姿量で35万tまで低減することを目標としている。
調査対象は38社108工場・事業所(非会員の協力会社5社11工場・事業所を含む)で、工場・事業所別の産業廃棄物の最終処分量、有効利用率、発生量、減容化量、再資源化量、有効利用先を調査。37社107工場・事業所(13年度における紙・板紙の生産シェアは、対象会社合計の99.9%、全製紙会社合計の89.4%を占める)から回答を得た。
 以下、調査結果など内容を紹介する。

〔調査結果〕
 (1) 産業廃棄物発生量
 発生量は508.3万tで、対前年度比11.9万tの増加。人口減、需要家の紙関連コストの削減など内需減少に繋がる構造的要因が定着しているものの、アベノミクス効果に加え消費税率引上げにともなう駆込み需要の影響により、13年度の紙・板紙生産量は対前年度3.6%増となったため、発生量のうち約7割を占めるPS(有機性スラッジ等)が増加したことが主因である。
 (2) 減容化量
 減容化量は257.1万tで、対前年度比11.4万tの増加。減容化量の内訳は、燃料利用を基本とするPSの可燃部分が約80万tおよび廃プラスチック・木くず等が約12万tであり、残りの約165万tは蒸発水分である。
 (3) 再資源化量
 再資源化量は232.1万tで、対前年度比4.3万t増。再資源化量(有効利用)よりも発生量が増加したため、再資源化率は対前年度0.2pt下降している。
 (4) 最終処分量
 最終処分量は19.1万tで、対前年度比3.9万t減少。目標の35万tを15.9万t下回り、目標達成となった。
 (5) 有効利用率
 有効利用率は96.2%で、対前年度比0.8pt上昇。これは発生量が増加した一方で、最終処分量が減少したことによる。
 なお、PSは有姿において水分の変動が大きいため、紙パルプ業界では廃棄物を絶乾量で管理している。表2は参考として絶乾ベースの結果を示したものである。

 〔目標達成への取組みと実績に影響を与えた要因(技術的・内部的・外部的要因分析)〕
 (1) 主な取組み
 目標達成に向け、再資源化のための技術開発や再資源化先に関する情報交換に努めるようにしている。また、最終処分量の実績を業界内部で公表する制度を設けることで、取組みに対する意識づけを図っている。
 なお、産廃発生量は先のリーマン・ショックや東日本大震災のような経営環境に大きな影響を与える事象のみならず、生産工程の変動などにより容易に増減するため、日ごろの操業管理に留意する必要がある。
 (2) 実績に影響を与えた要因(技術的・内部的・外部的要因分析)
これまで最終処分量の削減に苦慮していた数社において有効利用先の開拓が進んだため、全体の最終処分量減少に繋がった。

 〔循環型社会形成に向けた取組み〕
 (1) 環境負荷低減の取組み
 環境負荷低減の取組みは、大きく分けて発生源対策と再資源化対策の2本立で行っており、廃棄物最終処分場の延命にも努めている。
 ・発生源対策
 主体はPSの削減であり、抄紙工程での歩留向上剤の使用による微細繊維の歩留り向上や、抄紙工程および古紙パルプ工程の排水からのパルプ回収など、原料の流出防止等に取組んでいる。また、脱水効率の向上等により、生産量当たりのPS等の発生比率の抑制に努めている。
 ・再資源化対策
 今まで原料として使用していなかった異物の混入が多い低品質古紙の使用も、製紙工場の産廃発生量の増加要因となるが、原料として利用を増やしている。
PSは焼却して減容化を図るだけではなく、燃料としてバイオマスボイラー・廃棄物ボイラーで燃焼して熱エネルギーを回収し利用することで、化石燃料の使用削減にも努めている。
 また、発生したPS灰の再資源化用途は、石炭灰と同様にセメント原料向けが多い。一方、PS灰の再生填料化など新規用途開発を進めており、最近ではその成果が実用化されてきている。ただし、このような新規用途での利用量はまだ少ないため、今後も利用拡大を進めていくことが必要不可欠である。
 ・循環型社会に向けての貢献
 建設業など他業界から発生する廃材を燃料として利用することに加え、RPF、廃プラスチックおよび廃タイヤ等を燃料として受け入れ利用することにより、他業界における産業廃棄物の減量化・再資源化に貢献している。
 (2) 3R推進に資する技術開発と商品化等
 具体的事例は次の通り。
 ・15年度までに古紙利用率を64%とする古紙利用率目標の達成に向けて取り組んでいる。
 ・薬品回収工程の無機系廃棄物の削減のため、更なる安定操業に努めている。
 ・古紙パルプ製造工程で発生した廃棄物を焼成・加工し、再生原料として有効利用している。
 ・PS灰や石炭灰を造粒固化して土壌環境基準を満足する土木資材を製造し、埋め戻し材、再生砕石、下層路盤材などへの有効利用を進めている。
 ・塩素濃度の高い各種灰の有効利用拡大に向けて、脱塩技術を開発した。
 ・従来は大部分を焼却処理していた機密書類のリサイクル化に向け、専用処理工程を開発した。
 ・食品会社から発生する植物系廃棄物を原料または燃料として有効利用している。
 ・段ボールにおいて、軽量原紙を開発してリデュースを促進。また、耐水・鮮度保持などの機能性を付加することで、環境負荷を低減した包装材料の提供を進めている。
 ・有機性汚泥の一部を畜産の敷料として有効利用している。
 (3) 事業系一般廃棄物対策
 ・ごみの排出者としての責任を自覚し、事業所から発生するごみについても減量化と分別回収を徹底するように努めている。

 〔循環型社会の更なる進展に向けて企業が直面する課題と政府・地方公共団体に対する要望(法令改正、運用改善等)〕
 構造的要因などによる内需減少等にともない、紙・板紙の生産量が減少すれば廃棄物の発生量もPSを主体に減少するため、従来通りの削減努力を行っていれば最終処分量も減少する。しかし、環境負荷低減の観点から、企業努力による循環型社会の更なる進展を目指すことが求められている。
 これを実現するためには、企業グループ間で産業廃棄物を自ら処理することができないことや県外産業廃棄物の流入規制等、足枷となっている現行の廃棄物に関する法令および地方公共団体の運用規制を見直す必要がある。
 これまで紙パルプ業界は、政府に対して廃棄物行政に関する諸々の規制改革要望を行ってきたが、廃棄物の適正処理の確保を理由になかなか実現していない。12年12月に発足した安倍内閣は、わが国の経済を再生するに当たっての阻害要因を除去し、民需主導の経済成長を実現していくために不可欠の取組みとして、規制改革を内閣の最重要課題の1つに位置づけていることから、ぜひとも現場の実態に即した規制改革の推進をお願いしたい。

(紙パルプ技術タイムス 2014年12月号)

日本製紙連合会/タイなど3ヵ国を対象に古紙回収システム研修会
 日本製紙連合会は12月10〜18日の土日を除く7日間、東京・足立区の海外産業人材育成協会東京研修センターで、タイ、ベトナム、マレーシアを対象とした「古紙回収システム研修会(第3回)」を実施する。3ヵ国から各8名程度(製紙会社、古紙回収業者、業界団体、関連行政機関、民間団体)が参加し、種々の講義を受けるほか、回収現場や製紙工場を実地見学する。
 同研修会は、3ヵ国それぞれの実情に即した古紙回収リサイクルシステムの整備を促すことを目的に、2012年から年1回のペースで実施、日本の製紙業界、古紙業界、行政の取組みを紹介している。3回を1クールとして計画されたもので、今回で一定の区切りとなる。
 タイ、ベトナム、マレーシアでは、過去2回の研修参加企業が中心となり、古紙分別排出の啓蒙活動や、古紙の品質管理向上に取り組んでいる。しかし、業界や政府機関が一体となっての具体的な取組みまでには至っておらず、古紙回収率はタイ57%(2013年)、ベトナム36%(2013年)、マレーシア52%(2012年)と今なお低い水準にとどまる。
 今回の研修会でも過去2回と同様、日本の古紙リサイクルを紹介し、各国での取組み加速に向けたヒントを提供する。また過去2回の結果を踏まえ、3ヵ国の問題意識として抽出された古紙品質規格の未整備について、日本の古紙標準品質規格の内容、およびその策定までの流れを紹介し、各国での標準品質規格策定の一助とする。
 研修カリキュラムは次の通り。
 〔講 義〕
 ・日本の製紙産業の歴史と現状(日本製紙連合会/斎藤俊氏)
 ・古紙再生促進センターの役割と古紙標準品質規格について(古紙再生促進センター/中村好伸氏)
 ・古紙回収事業の歴史と現状(日本再生資源事業協同組合連合会)
 ・古紙直納問屋の歴史と現状(全国製紙原料商工組合連合会/栗原正雄氏)
 ・日本の製紙会社の古紙利用(王子エコマテリアル/岡村光二氏)
 ・段ボール古紙の現状と課題(レンゴー/森塚伸氏)
 ・日本の廃棄物政策(環境省/二木豪太郎氏)
 ・日本の3Rに関する施策(経済産業省/白石雅裕氏)
 ・自治体の廃棄物対策および古紙回収活動(東京都環境局/須賀隆行氏)
 〔見 学〕
 ・古紙回収業者の回収活動(日本再生資源事業協同組合連合会)
 ・古紙ヤード(新井商店綾瀬営業所)
 ・レンゴー八潮工場
 ・王子マテリア富士工場
 ・相川鉄工実験センター
 〔その他〕
 ・発表およびディスカッション;(初日)「3ヵ国における古紙回収リサイクルの現状と課題」、(最終日)「研修成果発表会」
 ・総括、意見交換会(日本側有識者、研修協力者との意見交換会)

(Future 2014年11月17日号)

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