13/07/04藤原科学財団/第54回「藤原賞」に香取秀俊・宮脇敦史の2氏
 公益財団法人藤原科学財団は、第54回「藤原賞」受賞者に工学博士・東京大学大学院工学系研究科教授の香取秀俊氏(光格子時計の発明と実現による高精度原子時計技術の開発)、ならびに医学博士・独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長の宮脇敦史氏(革新的バイオイメージング技術の開発研究)を選出し、6月17日東京都千代田区の学士会館で贈呈式を行った。
 同財団は、わが国製紙王・藤原銀次郎翁が日本を世界トップレベルの科学技術国とするため私財を投じて1959年に設立。主な事業活動として、わが国科学技術の発展に大きく貢献した研究者を顕彰し副賞賞金1,000万円を贈呈する「藤原賞」と、研究者による国際的なセミナー開催を援助する「藤原セミナー」を実施している。ちなみに、藤原賞については1975年の第1回以降計109名を顕彰し、副賞累計額は8億4,000万円に上る。
 今回の受賞者のうち香取氏の研究は、「魔法波長」をもつ複数本のレーザー光によって形成した格子中に多数のストロンチウム原子を閉じ込め光を照射、原子が吸収・放射する光の周波数を測定し、その周波数を時計に利用することで、宇宙誕生から現在までの137億年の間にわずか0.4秒しか狂わないという光格子時計を実現したもの。
 一方、宮脇氏は蛍光タンパク質を利用し、細胞・組織・器官のなかで起こるシグナル伝達を可視化するバイオイメージング技術において卓抜した業績をあげ、蛍光カルシウム指示薬“カメレオン”、世界でもっとも明るいGFP改変体“ヴィーナス”、UVによって緑から赤に変色する蛍光タンパク質“カエデ”、フォトクロミズムの性質を示す蛍光タンパク質“ドロンパ”などを相次いで開発してきた。
 冒頭、挨拶に立った篠田和久・同財団理事長は両氏の業績を讃えるとともに、財団の使命について大要以下のように述べた。
 「今年は42件の応募があり、昨年度の46件に次ぐ多い応募者数となった。そのなかから選ばれた両受賞者の研究業績は海外でも高い評価を受けており、今後さらに飛躍発展されることを期待する。
 現在、当財団は本日開催の藤原賞贈呈と藤原セミナー開催という2つの事業を行っている。藤原セミナーはわが国の研究者が計画する国際セミナーの開催を援助するもので、毎年2点以内を採用、今年は2回のセミナーが予定されている。国内外の研究者が1つのテーマについて寝食をともにしながら自由な雰囲気のなかで交流を深めることを目的としており、参加者からの評価もきわめて高い。
 運営環境はたいへん厳しいが、当財団は両事業を通じて日本の科学技術発展にいささかなりとも貢献していく所存である」
 続いて、選考委員長を務めた東京大学名誉教授・山崎敏光氏による選考経過の報告、篠田理事長による藤原賞贈呈、公務多忙により出席できなかった下村博文・文部科学大臣の祝辞代読が行われ、受賞した両氏がそれぞれ謝辞を述べた。

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