王子ホールディングス/卓球ラケット用素材にCNFシートが採用
王子ホールディングスのセルロースナノファイバーシート(CNF シート)はこのほど、実用化の第一弾として、㈱ダーカーの卓球ラケット用素材に採用が決定した。
木質由来の天然素材であるCNFは、高強度、高透明性などさまざまな特長を活かした用途展開が期待されている。王子HDは製紙業のコア技術をベースにしたCNFの開発を進め、透明連続シート製造に世界で初めて成功。同シートは、熱寸法安定性やフレキシブル性などの特長から、特にガラスやプラスチックフィルムの代替として期待されている。同社では、国内外の各方面からサンプル需要が高まったことを受け、2017年度にCNFシートの実証設備を導入。幅広い分野でサンプル配布を進めると同時に製造技術を磨き、連続生産による量産技術を確立した。現在は、機械物性や表面性などのカスタマイズが可能という特性を活かし、用途毎の要求に合わせたシートや異素材と複合化できるシートなど、個々のニーズに応じた開発を進めている。
卓球ラケットは、数値で表しにくい「球を打った感覚(打感)」という官能評価が重要で、その打感は卓球ラケットの素材の持つ反発力と弾力に左右される。例えば、反発力を上げようとすると、一方で弾力が下がってしまい、結果的に打感が悪くなるという具合だ。王子は、「卓球ラケットのベース素材である木材とCNF シートを複合化することで新たな打感を発現させる」という発想のもとテスト試作を繰り返し、反発力と弾力を共存させたCNFシートのスペック最適化に成功。これにより、CNFのポテンシャルを最大限引き出した、新たな打感領域の卓球ラケットを実現した。この卓球ラケットは、ダーカーの新しいラインアップとして、2020 年4月以降に店頭販売される予定。
(FUTURE2020年2月24日号)