日本製紙/CNF強化樹脂実証生産設備が富士工場で稼働
日本製紙が富士工場に建設を進めていたセルロースナノファイバー(=CNF)強化樹脂の実証生産設備が、このほど完工し稼働を開始した。
CNFは、ポリプロピレンやポリエチレン、ナイロンなどの樹脂への混練により、樹脂を高強度化する新素材として自動車、建材、家電などでの利用が期待されている。日本製紙は、京都大学を拠点とする新エネルギー・産業技術総合開発機構(=NEDO)のプロジェクトに参加してCNF強化樹脂の開発に取り組んできたが、同設備はそこで得られた知見をもとに年間10t以上のCNF強化樹脂を製造する。今後は、さらなる量産化を目指した製造技術を確立し、自動車産業のほか幅広い産業へのサンプル提供を進めて、用途開発を加速させる。
なお、日本製紙は4月、TEMPO触媒酸化法により完全ナノ分散したCNFを生産する、世界最大級の量産設備(年間生産能力500t)を、石巻工場で稼働させた。TEMPO触媒酸化法は、東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授らが開発したセルロースの化学変性方法で、パルプが解繊しやすく均一な幅のナノファイバーを得られるのが特長。同社はこれにより、機能性シートをはじめ、機能性添加剤やナノ複合材など、幅広い工業用途での利用を進めている。
また、今回の富士工場に続き、9月には島根県の江津工場で、食品や化粧品など添加剤用途のCM化CNFの量産設備を稼働する予定。CM化CNFは、食品添加物としてすでに販売されているカルボキシメチルセルロース(CMC)の製造技術を用いて化学変性した木材パルプから得られた、繊維幅が数nm~数十nmのミクロフィブリルセルロース。
日本製紙は今後、用途に応じたCNFの製造技術と本格的な供給体制を早期に確立し、新素材・CNFの市場創出を加速していく考え。
(Future 2017年8月7 日号)