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大王製紙/日清紡の紙事業買収で家庭紙・洋紙事業にシナジー効果


 大王製紙は日清紡ホールディングスの紙製品事業を約250億円の現金決済により買収する。両社はそれぞれ2月10日の取締役会で本取引の実行を決議した後、対象となる日清紡ペーパープロダクツの株式譲渡契約を締結しており、4月3日に取引を完了させる。
日清紡の紙製品事業は家庭紙と特殊印刷用紙(ファインペーパー)で、2016年3月期の売上高は325億8,400万円。この買収により、大王製紙は家庭紙事業を質・量ともに強化し首位固めをする一方、新分野である特殊印刷用紙事業への参入を通じて、非汎用・高付加価値製品分野での品ぞろえを充実させ、全国有力紙卸商との関係をより密なものとすることができる。
 大王製紙は今回の買収の狙いを次のように説明している(要旨)。
 「当社は昭和18年の設立以降、主に新聞用紙と段ボール原紙の生産・販売を行っていたが、昭和50年代に印刷用紙、家庭紙の分野に進出し、総合製紙メーカーとして成長してきた。今日までに紙おむつなど家庭紙の吸収体製品、段ボール、印刷、粘着紙、ラベルなどの周辺分野に事業を拡大している。とくに“エリエール”ブランドを中心に展開する家庭紙分野では、昭和54年の参入以降7年間でトップメーカーに躍進、市場で確固たる地位を築いている。
 一方、日清紡HDの紙製品事業は70年の歴史を有し、家庭紙分野から、ファインペーパーや合成紙を中心とする洋紙分野、電報やパッケージなどの紙加工品分野、ラベルシステム分野に至るまで、幅広い製品を製造・販売している。そして当社はこれら製品のすべてをグループ内に保有しており、経営資源を最大限活用して事業価値を高め、発展させていける。
とりわけ洋紙分野は当社にないファインペーパーや合成紙に特化しているため、当社グループとして製品ラインナップの補完・拡充ができ、洋紙事業の構造転換という、現在の第2次中計で進めている事業戦略にも合致する。さらには第2次中計で掲げる、家庭紙製品の競争力強化と高付加価値商品の拡販戦略にもつながることから、この取引を実行することにした」(2月10日付プレスリリース)
 また、日清紡HDは同じ2月10日付リリースのなかで次のように述べている。
「当社グループの紙製品事業は70年の歴史を有し、家庭紙、洋紙、紙加工品の3事業で、特長ある高付加価値品を市場に提供している。プレミアムティシュ“コットンフィール”やファインペーパー“ヴァンヌーボ”シリーズなど競争優位な商品が市場で高い評価を得ている。しかし年間売上高は300億円と小規模レベルにとどまっており、市場が成熟化し寡占化か進む紙製品業界にあって、ニッチ市場の深耕による成長が難しい状況となっている。
 こうしたなか、大王製紙から当社に対して対象事業を譲り受けたいとの申し入れがあり、グループの成長戦略、対象事業の発展性および大王製紙の評価などを総合的に検討し、協議・交渉を進めてきた。その結果、紙製品事業を主業とし国内市場で圧倒的な競争力をもつ大王製紙へ譲渡することが、当社ペーパープロダクツグループの発展につながり、顧客や取引先の満足度向上、従業員処遇の安定向上に資すると判断した」
 なお、買収の対象となる事業は日清紡ペーパープロダクツのほか、その子会社である大和紙工、東海製紙工業の両社ならびに日清紡ポスタルケミカル、そして中国子会社である上海日豊工芸品の日清紡HD持分。
 今回の買収で、大王製紙は“コットンフィール”をはじめとする高機能の家庭紙製品を自社のラインナップに加えることになる。すでに高い認知度をもつエリエールブランドを活用して、そうした高付加価値商品の販売機会を拡大させ、量的成長とともに質的に変化する市場への対応力を高めて業界№1のポジションを不動のものとすることが買収の最大の眼目だろう。現に同社も「2018年10月予定の川之江工場家庭紙新マシン稼動により、紙製品全カテゴリーシェア№1達成を早期に実現させる」(同リリース)と明言している。
さらに潜在的なシナジー効果が大きいのは、これまで同社が手がけてこなかったファインペーパーや合成紙などの洋紙事業だ。これら非汎用製品と大王が従来から得意としてきた汎用製品の組合せは、流通業界にとって選ぶ価値の高い仕入ソースの誕生を意味する。

 

(Future 2017年2月13日号)

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