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日本製紙/米ウェアーハウザー社の板紙工場を買収


 日本製紙が米国ウェアーハウザー社の液体容器用板紙事業を現金2億8,500万米ドルで譲受する。同社の液体容器用板紙はワシントン州ロングヴュー工場にある5,080㎜幅、年産30万tのマシン1台で生産され、米国内への販売のほか輸出も行っている(当該事業の概要は表1、2を、ウェアーハウザー社の概要は表3を参照)。
その海外顧客の中で最大量を購入しているのが日本製紙で、つまり同社は今回、メイン仕入先の事業を買収することになる。具体的な事業内容は「ジュース、牛乳など向け液体用紙容器の原紙、カップ容器用原紙などの製造・加工・販売」と説明されている。
 両社は現在、この板紙で取引関係にあるほか、合弁で印刷・出版用紙事業のノーパックを経営している。ノーパックの工場はマシン3台で年産能力72万tの規模だが、液体容器用板紙を生産するロングヴュー工場と同じ敷地内にあり、電力、用水などのインフラは共用している。
 日本製紙は今回の事業買収に当たり米国で新規に100%子会社を設立し、この子会社がウェアーハウザー社の液体容器用板紙事業を譲受する形をとる。この子会社の資本金などは現時点で未定だが、新規連結の対象となるのは間違いなく、日本製紙の2016年度業績が底上げされるとともに、「2017年度に海外売上高比率20%」という5次中計の目標に一歩近づく。譲受手続きの完了は7~9月期中の見込みだ。
 ロングヴュー工場の主要設備としては前記した抄紙機1台のほか、3,251㎜幅のポリエチレン押出機2台があり、従業員数は500名。使用する原料はNBKP/LBKP。
 今回の取引はパッケージング分野を拡大したい日本製紙と、紙パルプ事業からの完全撤退で木材・林地事業への特化を進めるウェアーハウザーの思惑が一致した結果だ。日本製紙は買収の理由、狙いを次のように説明している。

 「当社は現在『第5次中期経営計画(2015~2017年度)』において、『既存事業の競争力強化』と『事業構造転換』を主要テーマに、今後成長が見込まれる分野に経営資源の再配分を進めている。パッケージング事業はその有望な分野の一つとして、強化、拡大に取り組んでいる。
本事業譲受けにより、当社紙パック事業においては原紙から加工までの一貫体制を確保し、トータルシステムサプライヤーとして、さらなる付加価値を顧客に提供していくことが可能となる。
 ウェアーハウザー社は本事業において、高度な加工技術と設備、輸出に適した立地などの事業優位性を有し、高い品質水準で市場の信頼を獲得している。同社と当社は、長年にわたる液体容器用板紙の取引や印刷・出版用紙の合弁事業を通じて、強固なパートナーシップを築いてきた。このたびの事業譲受けはウェアーハウザー社の事業再編を機に、両社が合意に至ったものである。
 本事業譲受けにより、当社は北米に新たな製造・販売拠点を獲得することになる。米国における“紙”素材志向の高まりを受け、紙カップ需要の増加が見込まれるなど、北米市場における事業拡大機会を捉えるとともに、太平洋岸という立地を生かしたアジア市場への販売拡大を進めていく。また産業用紙事業との連携、本年4月に発足したパッケージング事業新体制(パッケージング研究所、パッケージング・コミュニケーションセンター)とのシナジーのほか、外部加工事業会社との協業やM&Aを通じ、当社グループのパッケージ分野での新規事業展開を加速していく」(6月16日付ニュースリリース)

 一方、ウェアーハウザーにとって今回の売却は、紙パルプ事業からの完全撤退(=木材・林地事業への特化)に向けたプロセスの一環であり、今年5月にパルプ製造の5工場を22億ドルでインターナショナル・ペーパーに売却したのに続く措置である。同社は従来、①Timberland(森林地)、②Cellulose fibers(木質繊維)、③Forest products(木材製品)をコアビジネスとしており、紙パ事業は②に属している。だが同社はこのところ、②を売却して得られた資金を①と③に投入するというポートフォリオの見直しと再編を行っている。
 この方針に基づき今年に入ってからは、プラム・クリーク・ティンバーを84億ドルという巨額で買収した。米国で526万haに上る森林地と38ヵ所の林産品製造拠点を持つプラム・クリークは木材産業の巨人であり、この獲得によりウェアーハウザーは米国最大の森林地保有企業となって、森林・木材業界におけるポジションが一段と強化された。今回、液体容器用板紙事業の売却によって得られる資金の一部は、このM&Aで生じた債務の返済に充当される。

(以下、詳細はFuture 2016年7 月4日号)

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