中越パルプ工業/エタノール生産システムがJSTの支援プログラムに
中越パルプ工業と富山大学が共同で進めている「製紙汚泥を原料としたエタノール生産」に関する研究開発が、このほど、科学技術振興機構(JST)の「研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)ステージⅢNexTEP-Aタイプ」に採択され、1年間の導入試験を開始することとなった。
課題名称:製紙汚泥からの高温耐性菌によるエタノール生産システム
導入試験期間:1年間(全体の開発実施期間は7年間)
シーズ研究者:富山大学大学院理工学研究部・星野一宏准教授
中越パルプ工業と富山大学が進めている研究は、製紙工場で大量発生する汚泥を原料とする40℃高温耐性菌を活用したエタノール連続生産システム。製紙汚泥は現在、焼却処理してセメント原料などに再利用されているが、水分率約50%の製紙汚泥は燃焼時に多量の化石燃料を必要とする。しかし、このエタノール生産システムが完成すれば、汚泥焼却時の重油使用量とCO2発生量を削減し、価格競争力のあるバイオ燃料の供給が可能となる。
製紙汚泥には穀物にも含まれる6炭糖に加え、木質特有の5炭糖が含まれるため、一般的な酵母ではエタノール発酵の効率が悪く、さらに従来技術では汚泥に含まれる各種異物により発酵阻害が生じるという課題があったが、中パ・富山大が利用する高温耐性菌は、いずれの炭糖も発酵可能で、かつ糖化酵素を自ら分泌するため、糖化と発酵を同時進行できる。嫌気性に加え好気性条件下でもエタノール発酵が可能で、かつ自ら糖化酵素を分泌、木質に多い5炭糖も発酵できる唯一の天然菌。
星野准教授はこの天然菌に着目し、40℃以上で発酵能を有するまでその能力を高めた。さらに、遺伝子組換え技術を一切施していないため、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物などを用 いる際の規制措置を定めた法律)に抵触することなく、一般的なプラントとして建設・運転できる。この天然菌を用いた40℃以上の糖化発酵槽では、原料汚泥の糖化が進み、その糖を原料としてエタノール発酵が進む。槽内へ空気を吹き込みエアレーションすることで、槽から直接エタノールを蒸発回収でき、しかも槽内の濃度低下に伴い汚泥を追加補充する連続生産システムが可能となる。
中越パルプ工業では、このエタノール連続生産システムにより、化石燃料とCO2発生量を削減するほか、価格競争力のあるバイオ燃料の供給を目指す。
(Future 2016年5月16日号)