日本製紙連合会/環境行動計画(廃棄物対策)フォローアップ調査の結果を発表
日本製紙連合会は先頃、「環境行動計画(廃棄物対策)」の進捗状況を確認する目的で今年6月に実施した、フォローアップ調査の結果を取りまとめた。この調査は2014年度の実績を対象としたもの。
製紙連は「経団連環境アピール」に呼応する形で、1997年に「環境に関する自主行動計画」を制定。このうち廃棄物対策については、2010年度までに最終処分量を有姿で45万tまで削減する目標を定め、自主的な取組みを行った結果、目標を達成している。
そして2011年度以降は政府が策定した「第二次循環型社会形成推進基本計画」に基づき、2015年度までに同じく有姿の最終処分量を35万tまで低減することを目指し、継続してフォローアップ調査を実施している。
2014年度の調査対象は38社107工場・事業所で、このうち37社106工場・事業所から回答があった。この106工場・事業所の2014年度における紙・板紙生産シェアは、対象会社合計の99.9%、全製紙会社合計の86.2%に相当する。以下、調査結果である。
① 産業廃棄物発生量
発生量は506.3万tで、対13年度比2.0万tの減少となった。人口減、需要家の紙関連コスト削減といった国内需要の減少につながる構造的要因の定着や、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減などの影響により、2014年度の紙・板紙生産量が同△1.4%と縮減したため、発生量のうち約7割を占めるPS(有機性スラッジなど)が増加した結果である。
② 減容化量
減容化量は243.7万tで、対13年度比13.4万tの減少となった。減容化量の内訳は、燃料利用を基本とするPSの可燃部分が76.5万t、廃プラスチック・木屑などが約12.3万tで、残りの154.9万tは蒸発水分である。
③ 再資源化量
再資源化量は247.2 万tで、13年度より15.1万t増加した。発生量が減少したため、再資源化率は前年度より3.1ポイント(pt)上昇している。
④ 最終処分量
最終処分量は15.3万tで、13年度に比べ3.8万t減少した。目標の35万tを19.7万t下回り、目標を達成している(図1)。
⑤ 有効利用率
有効利用率は97.0%で、13年度より0.8pt上昇した。発生量が減少したが、それ以上に最終処分量の減少が大きかったことによる。
目標達成に向けた取組みと実績に影響を及ぼした要因について、製紙連は次のように説明している。
① 主な取組み
目標の達成に向け、再資源化のための技術開発や再資源化先に関する情報交換に努めるようにしている。また、最終処分量の実績を業界内部で公表する制度を設けることで、取組みに対する意識づけ/動機づけを図っている。なお産業廃棄物の発生量は、先のリーマン・ショックや東日本大震災のような経営環境に大きな影響を及ぼす事象のみならず、生産工程の変動などによっても容易に増減するので、日頃の操業管理に留意する必要があるとしている。
② 実績に影響を及ぼした技術的・内部的・外部的要因分析
内需の減少につながる構造的要因の定着や、これまで最終処分量の削減に苦慮していた数社において有効利用先の開拓が進んだことなどにより、全体の最終処分量が減少した。
PSの発生抑制と低品質古紙の利用拡大
〔環境負荷低減の取組み〕大きく分けて発生源対策と再資源化対策の二本立てで行っており、廃棄物最終処分場の延命にも努めている。
① 発生源対策
主体はPSの削減であり、抄紙工程における歩留向上剤の使用による微細繊維の歩留向上や、抄紙および古紙パルプ工程の排水からのパルプ回収など、原料の流出防止に取り組んでいる。また脱水効率の向上などにより、生産量当たりPS発生比率の抑制に努めている。
② 再資源化対策
今まで原料として使用していなかった異物の混入が多い低品質の古紙についても、製紙工場における産業廃棄物の発生量増加要因とはなるものの、原料としての利用を増やしている。
PSは焼却して減容化を図るだけではなく、燃料としてバイオマスボイラー/廃棄物ボイラーで燃焼させ、熱エネルギーを回収し利用することで、化石燃料の使用削減にも努めている。
発生したPS灰の再資源化用途は、石炭灰と同様に土木(骨材、路盤材など)やセメント原料向けが多い。一方、PS灰の再生填料化など新規の用途開発を進めており、最近ではその成果が実用化されてきている。ただし、このような新規用途での利用量はまだ少ないため、今後も利用拡大を進めていく必要がある(図3)。
③ 循環型社会に向けての貢献
建設業など他業界から発生する廃材を燃料として利用することに加え、RPF、廃プラスチック、廃タイヤなどを燃料として受け入れて利用することにより、他業界における産業廃棄物の減量化と再資源化に貢献している。
以下に具体的事例を紹介する。
〔3R推進に資する技術開発と商品化〕
・2015年度までに古紙利用率を64%とする古紙利用率目標の達成に向けて取り組んでいる。
・薬品回収工程における無機系廃棄物削減のため、さらなる安定操業に努めている。
・古紙パルプ製造工程で発生した廃棄物を焼成・加工し、再生原料として有効利用している。
・PS灰や石炭灰を造粒固化して土壌環境基準を満足する土木資材を製造し、埋め戻し材や再生砕石、下層路盤材などへの有効利用を進めている。
・塩素濃度の高い各種灰の有効利用拡大に向けて、脱塩技術を開発。
・従来は大部分を焼却処理していた機密書類のリサイクル化に向け、専用処理工程を開発した。
・食品会社から発生する植物系廃棄物を原燃料として有効利用。
・段ボールに軽量原紙を開発・採用してリデュースを促進。また耐水・鮮度保持などの機能性を付加することで、環境負荷を低減した包装材料の提供を進めている。
・有機性汚泥の一部を畜産の敷料として有効利用している。
〔事業系一般廃棄物対策〕
*ゴミの排出者としての責任を自覚し、事業所から発生するゴミについても減量化と分別回収を徹底するように努めている。
新たな目標は2020年度の最終処分量13万t
ここまで記してきたように「2015年度に産業廃棄物の最終処分量を有姿で35万tまで削減する」との目標は、すでに14年度実績で大幅に上回って前倒し達成されている。一方、政府は2013年5月に閣議決定した第三次循環型社会形成推進基本計画で、目標の達成時期を2020年度としている。そこで製紙連は新たに2020年度を目標達成年次として、「産業廃棄物の最終処分量を13万tまで低減する」との目標値を設定した。
これは2014年度の紙・板紙生産量(2,291万t)や最終処分量(15.3万t)の実績を踏まえ、生産量の将来予測や会員各社による最終処分量の削減計画なども考慮して策定したもの。ただし製紙連は「景気動向が不透明であるうえ、これ以上の最終処分量の大幅削減は困難な状況にあるため、政府に対し規制改革や関係法令の改正など、所要の措置が講じられるように強く求める。また計画の進捗状況や社会情勢の変化に応じて、期中であっても適宜必要な見直しを行う」としている。
このほか2016年度以降の業界独自目標として、有効利用率[=(発生量-最終処分量)÷発生量×100]については現状維持に努める。また資源循環の質を高める取組みとして、生産工程の効率改善を図るとともに、難離解古紙の利用技術やサーマルリサイクルの有効活用など、原料・燃料に関する技術開発を推進するとしている。
〔法令改正、運用改善の要望〕
構造的要因による内需の減少に伴って紙・板紙の生産量が減少すれば、廃棄物の発生量もPSを主体に減少するので、従来通りの削減努力を行っていれば最終処分量も自ずと減少する。
しかし製紙連は「環境負荷低減の観点から、企業努力による循環型社会のさらなる進展を目指すことが求められている」としたうえで、「これを実現するためには、企業グループ間で産業廃棄物を自ら処理することができないことや、県外産業廃棄物の流入規制など、足かせとなっている現行の廃棄物に関する法令、地方公共団体の運用規制を見直す必要がある」として次のように要望・提言している。
「これまで当業界は政府に対して、廃棄物行政に関する諸々の規制改革要望を行ってきたが、廃棄物の適正処理の確保を理由になかなか実現していない。2012年12月に発足した安倍内閣は、わが国が20年以上も続いた経済低迷から回復するための成長戦略に基づく政策の中核として、規制改革を位置づけていることから、ぜひとも現場の実態に即した規制改革の推進をお願いしたい。
また2016年4月に2010年の改正廃棄物処理法の施行後5年を迎えることから、環境省は2015年度に同法の施行状況などについて調査を実施し、この結果を踏まえて同法の点検・見直しの検討を行うとしている。この検討に当たっては、廃棄物の適正処理を確保しつつも、循環型社会のさらなる進展に向けた方向性が示されるよう要望する」
(Future 2015年11月23日号)