王子ホールディングス/マレーシアのラベル印刷会社を買収
王子ホールディングスは9月25日、マレーシアでラベル印刷製品や紙器、パンフレットなどの印刷・加工製品を製造販売するHyper-Region Labels Sdn. Bhd.(以下、HRL社)とその関連会社の発行済み株式60%を取得すると発表した。
王子グループはかねて事業構造の改革を推進しており、なかでも海外事業の拡大を大きな柱の1つと位置づけている。とくに経済成長著しい東南アジア地域では、先行していたパッケージング事業に加え、自社植林地を活用した木材加工事業を拡大させているほか、紙おむつ事業も始めている。さらに機能材事業においても、粘着ラベル分野の強化に向けた新製品の開発・拡販をはじめ、川上・川下とその橋渡しに当たる川中事業も含めて積極的にビジネスを展開、地域全体での事業拡大を図っていく計画だ。
粘着ラベル分野では、すでにOji Label(Thailand)Ltd.(OLT)を通じて川上の粘着原紙製造事業を行っているが、今回新たに川下に位置するラベル印刷のHRL社を取得することで、今まで手薄だった分野まで事業領域を拡げていく体制が整う。
〔HRL社の概要〕
商 号:Hyper-Region Labels Sdn. Bhd.
所 在 地:マレーシア南部のジョホール・バル
設 立:2003年6月23日
事業内容:ラベル、紙器、パンフレット、その他印刷・加工・販売
従 業 員:141名(2014年9月末)
直近の業績:(単位:100万RM)
13年9月期 14年9月期
売上高 24(6.8億円) 29(8.2億円)
総資産 32(9.1億円) 38(10.6億円)
注)100万RM=約2,800万円(2015年9月時点)
王子HDでは、その他のメリットや効果として次の点を挙げている。
(1)HRL社はラベル印刷に必要な各種印刷・加工機を保有し、偽造防止用封緘ラベルをはじめとする特殊ラベルにおける卓越した印刷技術は、日系企業や多国籍企業の製品ラベルにも多く採用されている。これら製品群の高い信頼性と素早い製品提供などのサービス対応が、王子が求める川下分野の強化に資すると判断される。
(2)マレーシアは、王子のパッケージング事業が積極的な展開を進めており、新たにラベル印刷・加工業に取り組むことでシナジー効果が発現し、原紙からバッケージング・ラベル品までのトータルパッケージングサービスを実現できる環境が整備される。
(3)粘着ラベル事業の一貫生産体制構築(川上~川下)が図れ、エンドユーザーとの距離の短縮によりタイムリーな製品づくりが可能となる。
王子HDでは「今後、機能材事業においてもグループの海外展開を積極的に進めていく」としている。なお同社は2015年3月期決算説明会資料の中で、機能材分野の海外事業戦略を次のように説明する。
・東南アジアを中心に機能材製品を拡販 → 15年5月、機能材製品の海外マーケティング部門設立
・粘着事業を中心にM&Aなどを通じ海外事業会社を強化 → 14年末、機能材事業を扱う海外事業企画メンバーを増強
これにより海外粘着紙事業などの売上高を15年度200億円から500億円に拡大するという目標を立てている。この数値目標達成のための有力な武器となるのが、現在ミャンマーのティラワ経済特区工業団地に建設中の製造拠点。パッケージングや機能材製品の加工事業(タック原紙の断裁など)を手がけるこの拠点は、16年4月に完成稼働の予定。
ちなみに、ティラワ経済特区はミャンマーにおけるパッケージ型インフラ事業として、日本が官民を挙げて進めるプロジェクト。ヤンゴン中心市街地から南東約23kmに位置するティラワ地区の約2,400ha(東京ドーム約513個分)に製造業用地域、商業用地域などを総合的に開発する事業で、うち早期開発区域の396haでは日本-ミャンマー合弁の開発事業体が13年11月から工事を開始、先頃その一部(210ha)が開業した。
(Future 2015年10月12 日号)