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王子HD、山形大学/CNFが主成分の高分子電解質膜を開発


 王子ホールディングスと山形大学はこのほど、セルロースナノファイバー(=CNF) を主成分とする、燃料電池用 「高分子電解質膜 (=PEM)」の開発に成功した。
 王子は、木質由来の新素材開発を中心としたグリーンイノベーションの1つとして、CNFの研究開発に取り組み、高品質(高透明・高粘度・チキソトロピー) なCNFの製造を可能にした。今回の新規開発では、山形大学(増原陽人教授)が開発中のプロトン伝導性を持つ微粒子と王子のCNFを複合化したPEMを製作し、高いプロトン伝導性と膜強度を併せ持つ特異な性能を確認した(共同で関連特許出願済)。プロトン伝導性とはプロトン(水素イオン)が通る性質を言い、これが高いほど電池性能が向上する。
 既存の燃料電池に用いられるPEMはフッ素を含み、また石油由来の樹脂製であることから、安全面や環境面で課題が指摘されている。これに対し、王子と山形大学が開発に成功したPEMは、燃料電池に求められる高いプロトン伝導性は備えながら、木質由来のCNFを主成分とし、PFAS(有機フッ素化合物/欧米を中心に規制が進行中) フリーも実現した。
 脱炭素社会への転換がグローバルに進行し、世界各国で電動車が普及していく中で、水素を燃料とし、走行時には水蒸気しか発生させない燃料電池自動車への期待は高い。燃料電池の需要はますます高まることが見込まれ、2032年の燃料電池市場は313億米㌦に達すると予測されている。王子は今後、開発したPEMの実用化に向けた研究開発を進めていく考え。

(FUTURE 2024年3月25日号)

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